第7話 ピンキー・ザ・ビュー

 その光景を目の当たりにして、俺は唖然とさせられ、視線が釘付けになってしまう。

 蛍光ピンクのパンツをさらしながら、無防備な状態で眠っているはなを見て、改めて彼女が女の子であることを意識させられてしまい、思わず生唾を呑み込む。

 しかしそこで、俺は昨日華が言っていた言葉を思い出す。

 そうだ、落ち着け俺。華には他に気になる男がいるって言ってたじゃないか。

 だから、これは単なる事故でり、他意はないのだと。

 だが、思考を巡らしているうちに、俺はふと一つの考えに思い至る。


 ……待てよ。


 確かに華は昨日、気になる男がいると言っていた。

 けど、華はその気になる男子がに気づいてしまったのだ。

 つまり、華から話を聞いて、俺は勝手に振られたとばかり勘違いしていたけれど、華の気になっている男子がのである。

 いやいやいや、流石にそれはないだろ。

 俺は自分に言い聞かせるようにして首をぶんぶんと横に振る。

 華の交友関係を考えれば、現実的に俺が気になる男子であると考えるのは自意識過剰すぎだ。

 華とは中学時代からの友達で、異性とは思えぬ仲の良さである。

 けれど、今までお互いそういう色恋沙汰のイベントへ発展したことはなく、異性として意識したことも今まで一度もなかったのだから。


 けれど、そこでふと思う。

 付き合っていない男女がホテルで同じ部屋に泊まることをそう簡単に許可することなどあるのだろうかと……?

 もしかしたら、俺とならそういう展開にならないと分かっていたから、華が一緒の部屋に泊まることを許可してくれたという可能性も考えられる。

 ただ昨夜、自分のベッドがあるにもかかわらず、華は俺のベッドに潜り込んできて添い寝をしてきた。


 これには一体、どういう意図が含まれているのだろうか?


 状況証拠だけで判断すると、俺のことを華が異性として意識している可能性も十分にありうる。

 そして、今目の前にしている蛍光ピンクのパンツを見て、俺はさらに混乱に陥っていた。

 それもそのはず。


 これは一体どっちなんだ⁉


 蛍光ピンクのパンツには、華からのどういったメッセージが込められているのか分からなかった。

 女の子がピンクのパンツを穿いてるときってOKのサインなのか?

 いやでも……蛍光ピンクだぞ⁉

 普通男を誘惑するなら、フリルの透け透けのパンツとか、黒のTバックとか、男の欲情をり立てるような下着を身に着けるのでは?

 まあでも……あれは一般的見解であって、華にとっては蛍光ピンクのパンツが勝負下着のサインなのかもしれない。


 あぁ、やっぱりわかんねぇよ!!!!


 果たして俺は、この状況でどう行動するのが正解なんだ⁉

 頭を抱えて懊悩している俺の横で、華は相変わらずスヤスヤと寝息を立て、無防備に真っ白な素肌と蛍光ピンクの下着を露出させた状態で眠っている。


「んんっ……」


 すると、華は眉根をひそめ、身体を軽く身震いさせた。


「……」


 そんな華の様子を見て、俺はそのまま華へそっと毛布を掛けてやった。

 やっぱり、蛍光ピンクのパンツは違うよな。

 華が気になっている男子が俺なわけがない。

 俺は、そう結論づけた。


「ふぅ……シャワー浴びてくるか」


 朝からとんでもないハプニングに巻き込まれたせいで、変な汗をかいてしまった。

 華が起きる前に、さっさとシャワーを浴びて、身体をスッキリとさせてこよう。

 俺は華を起こさないようにしてベッドから下りて、忍び足でシャワー室へと向かっていくのであった。

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