Ⅰ トリカゴの若き王と、その仲間たち
タンクトップ姿のマナがおっきいおっぱいを揺らしながらシオリとおれに缶ビールを持ってきた。シオリは、マナのおっぱいをぴしゃんと叩いて「何食ったらこんなでかくなんだよ」と嫉妬の言葉を吐く。
マナは「いやん」とおっぱいを押さえながらすぐに下がった。
「ブラドンかぁ――ビーバーズ可愛いけど、結構凶暴だっていうけどね。まぁでも、ジンベエなら楽勝でしょ?協力しないなら全員ぶっ殺してブラドンの利権も貰っちゃえば?」
「物騒なこといきなり言うなよ。ビーバーズ関係ないかもだし。いちいち顧客のことなんて覚えてないだろ、それに、今回はバクローもやべぇって言ってるんだ」
「どうかな、バクローなんてあんな臆病者の言うことなんか気にしない方がいいよ。外の女の子なんて上客だから、覚えてないことなんかないと思うけどね。全然いいよ、なんか情報ないの?すぐにうちでも手配しようか?トーヤんとこも使ってさ、派手に揉めながら捜してもいいんじゃない?」
きゃはは、とシオリは笑う。本当にシオリは揉めごとが好きだ。だけど、おれは揉めごとはごめんだ、もっとスマートに解決をしたい。生きているかすらわからないんだから。
「お前も知ってるだろ?バクローの能力──第六感は当たる。何があるかわからないんだ、大きく関わって欲しくない。それに、なんかビーバーズのブラドン利権に、品外館の滑川が絡みたがってるみたいで、バクローの言う危険はそっちじゃねぇかなって思ってる。女人は品外館にケルベロスよりも近い、さりげなくていいんだ、さりげなくで」
「ふふ、反逆の王ともあろう男が、弱気になったね。ううん、大人になったのかな?そんなジンベエも嫌いじゃないんだけどね。滑川も、品外館も――私は関係ないから。ジンベエの頼みなら、文字通りなんでもするから」
シオリがそう言ってもたれかかってきた。おれは軽く咳払いをすると、ポケットから先程ミナシマに貰った写真を取り出す。軽く、声のトーンを落としてから口を開く。
「この子らしいんだ、この子の知り合いの女からの依頼でさ。生死に問わず、捜して欲しいらしい。行方不明になったのが一ヶ月前。本当に、聞いたりとか、調べたりとかしなくていいから、なんか情報あったら、くれよ。当然、成功報酬からの謝礼はする」
「ふーん…」
シオリは写真を手にとって眺めると、そのままちょっと見てテーブルに投げた。急に不機嫌になったシオリに――女王に、ゴブリンなおれは少し怯える。
「依頼者ってさ、女なんだ?」
「え?」
「依頼者って、女の人なんでしょ?」
「え、ああ――そうだよ」
そこか、そんなところで不機嫌になるか。怯えるゴブリンは、ちらっと女王の顔を見たけど、女王――様は明らかに不機嫌そうな顔をしていた。
「じゃあ、どっかで二人きりで話して、依頼を受けたってことだよね?」
「ふ、二人っきりっていうか、ボンボンでね」
「私には最近、そういうデートっぽいことも何もしてくれないのにね、ふーん」
「い、いやまぁシオリ。そういうんじゃないじゃんか。依頼を受けただけだし」
「もう手伝わない。私としても、女人としても、手伝わないから。勝手にやれば?むしろ邪魔するかも」
「ま、まぁそう言わずにさ。ほんと、何かあったら――とかでいいんだ、ね?で、でもまぁ、無理に手伝ってもらうっていうのもあれなんだけどね。せめてあの――邪魔だけはほら、ね?勘弁してくれないかな」
「うーん…」
シオリは前を向いたまま、少し考え込むように下を向いた。
「じゃあチューして」
「は、はい?」
「今ここでチューして抱きしめて。女人への報酬は、それでいいから」
「こ、ここでですか?」
「そうだよ。昔はどこでもチュッチュしてくれたじゃん」
別に全然いいんだけど、周りがめちゃくちゃ見てるし、オルグに関しては怒りとか通り超して悟りを開いたような顔でおれ達を見つめている。
「ぜ、全然いいんだけど、せめて場所変えないか?」
「部屋に行ってもいいけど、それだとチューだけじゃすまなくな――」
「ジンベエくん、シオリさん、そこまでだ」
おれ達の座るソファーの前に、メガックが座る。メガックはすぐにテーブルにあった写真に目を通すと、そっと写真を戻した。
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