第6話 魔力の抑え方
俺は、腕に表示されるステータスを見た。
ステータス
勇者 Lv.10
名前 雨宮豊晴
服装 青マント付きの鎧
スキル 魔力感知 自動再生 身体防護
やっと来た。念願のレベル10だ。これで魔法を覚えることができる。
「お兄ちゃんなんでそんなにニヤニヤしてるの?」
「ん?あぁ、なんでもない」
俺はまだアリスに自分が勇者であると伝えていない。だから腕からステータスが見れることも魔法が使えるようになったことも知らない。
そもそもアリスが記憶改竄されているとしたら、勇者の存在や魔法やスキルの存在も知らないということなのか?アリスにはまだ謎が多すぎる。実は少し前からいろいろ質問して情報を得ようとしているのだが、全て覚えていないという回答しか返ってこなかった。おそらくかなり強力な記憶改竄の魔法をかけられているのだろう。
念の為、魔法の習得はアリスに見られない場所で行うことにした。
「アリス!飯だ!」
「ありがとう!お兄ちゃん!」
「俺は明日に備えて少し周りを安全か確認しに行ってくるから、絶対にここから離れるなよ?」
「わかった!」
よし、このくらい離れていればもしもの時何かがあっても大丈夫だろう。
カバンの中から出した魔法書を開く。すると魔法書に書かれている文字が光だし、空中に映し出された。
おぉ……。やっぱり魔法書にも魔法が使われているのか。まずは、発動する魔法にあるそれぞれの詠唱を覚えないといけないらしい。
魔法とは…生き物の中にある魔力を消費し、それぞれの物質を作り出しそれらを操る。魔法の強さや難易度の高さによって消費する魔力は異なり、複数の魔法の組み合わせなどは自由自在である。
ウォーター…水に換えた魔力を自由自在に操ることができる。
ファイアー…炎に変えた魔力を自由自在に操ることができる。
サンダー…雷に変えた魔力を自由自在に操ることができる。
ヒール…回復薬に変えた魔力を自由自在に操ることができる。
まずは、詠唱を唱えたいのだが……よ、読めん!!な、なんの文字だよこれ!詠唱だけ記号みたいな文字で埋め尽くされている!
こうなったら、雰囲気だけで適当に詠唱してみるしかないな。
「なんちゃらの断りをなんちゃらしこの我に力を与えよ。ウォーター!!!」
水の塊が前に出した手の先に生成されていた。中に浮いていて明らかに操れている状態だった。
えぇ!できたのか?こんな詠唱で。だが、まだ完全に操るには少し時間がかかりそうだが、戦闘には十分使えそうだ。これから戦闘を繰り返していくうちに慣れていくだろう。
魔法が使えるようになったことで、テンションが上がり全部の魔法を最低限ではあるが習得することに成功した。
「キャァァァ!だれ?!近づいてこないで!」
「静かにしろ!あの男が何者なのか教えてくれればすぐにこの場を離れてやる」
「本当に知らない!たまたま助けてもらっただけ!」
「くそ!なら吐き出すまでここから離れないぞ!」
「嫌だぁぁぁぁ」
俺は悲鳴が聞こえた時、すぐにアリスだと気づいて来た道を戻ってきた。するとそこには長髪の女がアリスを脅していた。
「おい!何者だ!アリスから離れろ!」
すると女は笑みを浮かべながら言った。
「おぉ、ご本人様登場ですか」
「どうゆうことだ!」
「お兄ちゃん!この女の人、お兄ちゃんの正体を教えろって私を脅してきたの!」
俺の正体をだと?なぜだ。勇者であることはバレていないはず。勇者の疑いがあるとしても何処から情報が漏れた?他の国に入国したこともない。だとしたらアリスかウィルロードのどっちかってことか?
「今なんで疑われているか考えてたな!」
「あぁ、何か問題でもあるか?」
「なら、私が何故疑われいるか教える代わりに引き換えとしてお前の正体を教えるってのはどうだ?」
こいつが本当のことを言う保証は何処にもない。今はこいつを疑うのが正解か。それとも情報を得るのが正解か。自分の身を守るためなら情報を聞くことが重要になるが下手をするとこいつに情報を持ってかれる可能性もある。
「ならお前の秘密情報も教えろ。それなら考えてやる」
「ほう、それはお前の正体が広まってはいけない情報であると認めていることになるがいいのか?」
「あぁ。だからそれで条件を飲む」
「面白い。いいだろう。私はミサキ。ただの旅人で何処の国とも交流を持っていない。」
「それで、なんで俺の正体を知りたいんだ?」
「そのお前から出てる膨大な魔力の正体を知りたかったのさ」
「俺から出てる膨大な魔力だと?なんのことだ」
「お前自分の魔力がわからないのか?」
「自分の魔力だと?」
「つまりお前は今自分がここにいるって主張しているのと同じってことだ」
俺の知らないところで自分の魔力が漏れていたと言うことか。しかし俺にそんな魔力量があるのか?魔法もさっき習得したばかりだし。
「なるほど。わかった。それでお前はそれを知ってどうするつもりだ?」
「……あ、あの!私を仲間に入れてくれ!」
女は急に頭を深く下げ、何度も仲間にして欲しいと申し込んできた。
「い、いや ちょっと待て。突然すぎる」
「そこをなんとか!そんなに魔力があればかなり強い魔法が使えるんでしょ?」
こいつもアリスのように仲間に入れるのが正解なのか?だがさっきのように仲間にしてみないとわからないこともあると言う理由で入れたとしても、もし何かがあった時の代償が大きくなりそうな気がする。そもそも二人同時に勇者とばれた時のリスクが大きい。自分から言うとしてもまだそんな勇気はない。
「わかった。じゃあ私を仲間に入れてくれたら自分の魔力を抑える方法を教えてやろう」
確かに魔力を抑える方法は今の俺に一番必要なものであるが、さっきからと言いこいつは取引がうまい気がする。思い通りの波に乗ってしまってはいないだろうか。ただ魔力を抑える方法をなんとかして今すぐ身につけないと今の俺が想像しているよりも取り返しのつかないことになりそうだ。
「わかった。仲間に入ることを許可するが、それは俺が魔力を抑えることができてからだ。これでいいか?」
「ほんとか!わかった!」
俺はミサキに魔力を抑える方法を教えてもらった。
まずは、自分の魔力を目を閉じて感じる。魔力の気配を感じたらその魔力を自分のところに呼び寄せるように想像するんだ。体の外側から魔力の気配が消えたら成功だ。
これをすればしばらくの間魔力が漏れる心配はないが、魔法を使ったりするとまた漏れてしまう可能性が高い。自分お魔力の気配は無意識でも感じられるように特訓しておくといいだろう。
「なんとなくわかった」
「お前覚えがいいな。さっきの魔力といいこんなにすごい人が私の仲間になってくれるなんて!」
「何ニヤニヤしてんだ?」
「な、なんでもない!」
無事、魔力を抑えることができたしあまり悪いやつではなさそうだな。
「ところでお前、なんか忘れてないか?」
「え?私なんか忘れてたっけ?」
ミサキは首を傾げる。
「俺の正体は聞かなくていいのか?」
「あぁ!そうだ!お、お前何者だ!」
ミサキは急に大きな声を上げた。
「お前もしかしてドジか?」
「ち、違います〜」
こいつはドジな部分もあるが、おそらく実力は本物だろう。魔力の抑え方も覚えが早いと言われたけど、確実にミサキの教え方が上手だった。
「よっしゃ!アリス!ご飯にしよう!」
「ちょ!おい!逃げるな〜!」
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