学校ではお姫様、家ではメイドな俺の妹が超かわいい。

シュタ・カリーナ

第1話

 俺には妹がいる。目に入れても痛くないほどに可愛い妹だ。ロングの黒髪にぱっちりした目、白い柔肌に眩しい笑顔。兄である俺ですら時々ドキッとしてしまう。

 俺は大学生で妹は中学生とそれなりに歳は離れてはいるが仲は良い。むしろ良すぎる。

 というのも実は二人だけの秘密があるのだ。

 それは――


「おかえりなさいませご主人様!」


 メイド服に身を包んだ妹が玄関で出迎える。


「ああただいま」

「もう少しで夕飯ができるのでお先にお風呂へどうぞ」

「ありがとう」


 ――そう、俺がご主人で妹がメイドの主従関係、のようなことをしているのだ。

 別に本当に主従関係がある訳ではない。謂わばごっこ遊びのようなものだ(最も妹は真剣に真面目にメイドをしているが)。


 始まりは妹が中学一年生になった夏頃のことだった。俺が読んでいたラノベや漫画を見てメイドに興味を持ったらしい。それから俺のパソコンを使ってメイドを調べて、知識をどんどん吸収していき、ついには魔境秋葉原へ進出してしまう。あそこはメイド好きには魔境すぎた。

 妹はまだ中学生だったために俺も同伴したがメイドカフェに行ったり、メイドから話を聞いたり、それはもう凄い興奮状態だった。


 それからというもの自分でメイド服を作り、家事を覚え、妹はメイドになった。

 流石に親には恥ずかしいのか言っていない。幸いにも父は海外出張中だし母の帰りは遅いのでバレたことはない。

 そんなわけで料理・洗濯・掃除、あらゆる家事をしている妹だが、中学生には大変ではと思い手伝おうとしたことがある。しかし「メイドの仕事を奪わないでくださいご主人様!」と怒られてしまったためにどうすることもできなかった。まあ妹が家事を楽しんでいるのだからいいのか?


「ご主人様、お湯加減はいかがですか」

「ああ丁度良いよ」

「もう少しで夕飯が出来ます。今日はピンバーグですよ」

「おおハンバーグか。それは楽しみだ」

「もう少しで出来ますのでお待ちください。タオルはここに置いておきますね」

「ああ、ありがとう」


 そう言って妹は洗面室から立ち去っていった。

 こんなメイドをしている妹だが学校ではお姫様扱いされているらしい。本人曰くお付きの人が当番制でいて荷物を持ったりしてくれているらしい。家とは真逆である。

 当の本人はお世話されるよりもお世話したいと俺に愚痴を言ってくる。誰かこいつのご主人様になってやってくれ。可愛いし家事はやってくれるしお世話してくれる、自慢の妹だぞ。ただし寛容な心が必要ではある。


 俺は風呂から上がり、体を拭き、部屋着に着替えリビングへ向かう。美味しいハンバーグの匂いがする。丁度完成したようでテーブルには二人分の夕飯が並べられていた。


「ご主人様、どうぞお座り下さい」


 妹が椅子を引き俺を座らせる。そして妹も向かいの椅子に座り、頂きますをして夕飯を食べる。


「今日のハンバーグも最高だな!」

「ありがとうございます、ご主人様」


 ハンバーグを口へ運ぶと肉汁がブワッと溢れて、口の中で洪水を引き起こす。旨味が口中に広がりハンバーグを噛み締め堪能する。


「今日の学校はどうだった?」

「今日もお姫様扱いされました。家を出てから荷物持ちが待ってますし、学校でも廊下擬人で混んでいても付き人が道を開けてくれますし。私はむしろみんなのお世話をしたいのに」

「ちゃんと理解のある人を選んでくれよ?」

「それは分かってますよ。でもご主人様以外に受け入れてくれる人がいないんです」

「誰かに言ったのか?」

「はい告白された時に『私のご主人様になって下さいますか?』と聞いたら驚いた顔をして逃げていくんですよ?」

「それは酷いな、自分から告白しておいて」

「でしょう? ご主人様だけです、理解のある方は」


 学校ではお姫様、家ではメイド、そのギャップに驚いたのだろうか。


「あっ、ご主人様、今日はマッサージの日ですからね」

「ああそうだったな」


 今日は妹がマッサージをしてくれる日である。一週間ローテーションで奉仕内容を決めているのだ。

 これが実に上手い。日常、特に疲れることはないが心身ともに癒やされる至福の時である。

 こんな可愛い妹がメイドになってくれるというのに、なぜ理解のある人が現れないのだろうか。


 早く理解のある人が現れてほしいと思う反面、この至福の時が永遠に続けばと思う俺なのであった。

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学校ではお姫様、家ではメイドな俺の妹が超かわいい。 シュタ・カリーナ @ShutaCarina

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