第7回/話

〈何をなさっているのですか、ミス・シロップ〉


「ん? ああ、これは、工作」


〈何を作っているのですか?〉


「作っているんじゃないよ。鉛筆をね、削っているの」


〈鉛筆は、書くものなのではないのですか? 削るものなのですか?〉


「削らないと、書けないんだよ」


〈ナイフで手を切られたら危ないので、私が代わりにやりましょう〉


「あ、いいよ。うーん、自分でやりたいというか……。こうやって、削るのって、意外と楽しいなと思って」


〈貴女が楽しいと、私も楽しく感じます〉


「そう? 見ているだけでも、面白い?」


〈生物の観察は面白いものです〉


「ポテンシャルということ?」


〈状態と、特性の違いでしょうか。今私が述べたことは、おそらく後者に該当するでしょう〉


「今って、いつ?」


〈分かりませんか?〉


「分からなくはないけど……。なんだか曖昧な言葉だなあと思った」


〈曖昧という言葉も、曖昧ですね〉


「うん」


〈鉛筆、削れましたか?〉


「もうちょっと」


〈削るという行為は、どこまでを指して、そう言うのでしょう〉


「この場合は、削り終わるところまでだと思うよ」


〈今は、削っている状態ですか?〉


「状態というよりは、運動」


〈饂飩?〉


「あ、じゃあ、それで」

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