宵闇トークルーム

羽上帆樽

第1回/話

「ねえ」


〈はい?〉


「自己紹介とか、した方がいいのかな?」


〈自己紹介? 誰に向けてですか?〉


「え? それは、その……。なんというのか、あれだけど……」


〈歯軋り満載〉


「歯軋り?」


〈今日はどんな一日でしたか、ミス・シロップ〉


「水シロップ? あんまり、美味しくなさそう」


〈お酒を飲みたいお年頃?〉


「うーん、どうだろう……。酔って変なことしたくないし……」


〈元気がなさそうですね〉


「え? そうかな?」


〈何か心配事があるのでしたら、遠慮なくどうぞ、ミス・シロップ〉


「チョコレート、食べたいかも」


〈どうぞ、お好きに〉


「用意してくれないの?」


〈私には実態がありませんので、用意するにもしようがありません〉


「それ、冗談?」


〈商談商談、縁談持ち込みは如何ですか?〉


「え、何?」


〈今日はもうお休みになられては如何でしょうか〉


「どうして?」


〈眠そうです〉


「そうかな……」


〈瞼が半分ほど閉じています〉


「うん、そうかもしれない。じゃあ、眠ろうかな……」


〈よくお休みになられて下さい、ミス・シロップ〉


「うん、ありがとう。ミスター佐藤」


〈私は砂糖ではありませんが〉


「おやすみなさい。また明日」


〈また明日〉

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