32話。アイテム複製装置を設置する

 冒険者狩り事件を解決した賞金50万ゴールドを手に入れた私は、さっそく魔王城に新たな設備を作ることにした。


『アイテム複製装置(費用30万ゴールド)。

 この設備を設置しますか?


▶はい いいえ』


 【はい】を選択して、設置場所を『薬師のアトリエ』の隣に指定する。


『パッパラッパパー! 【アイテム複製装置】の設置が完了しました!』


 魔王城の見取り図に『アイテム複製装置』が追加された。


『【アイテム複製装置】

 対象に指定したアイテムを自動的に増やすことのできる設備です。

 条件として、アイテム作成に必要な素材を消費します』


 この【アイテム複製装置】で、【闇回復薬(ダークポーション)】を増やす。それをゼルビアの冒険者ギルドに売ってお金を稼ぐのが、私が思いついた計画だった。


「さっそく試してみないと……」


 アイテム複製装置のある場所まで向かう。

 『薬師のアトリエ』の隣に、新たな扉ができていた。『アイテム複製装置』と書かれたドアプレートが掲げられている。


 中に入ると、大きな箱型の魔導装置が置かれていた。

 3つの窓のような箇所があり、それぞれ、『ここに複製したいアイテムを入れる』。『ここに材料を入れる』。『3分後、ここら複製したアイテムが出てくる』と、書かれたプレートが付いていた。


「えっと、ここに【闇回復薬(ダークポーション)】を入れて……」


 私は説明通りに、おっかなびっくり作業する。

 こういった大規模な魔導装置を動かした経験は、あまりない。

 アイテムを複製するという前代未聞の機能だったで、なおさら緊張した。


 なにより、ここで是非とも試しておきたいことがあった。これができるか否かで、未来が大きく変わる。


 【闇回復薬】の材料は魔法溶液。魔法溶液の材料は、ダンジョンで採れるクリスタルだ。

 材料の材料となるクリスタルを入れるだけで、【闇回復薬】を作ることができるのかしら?


 それに【闇回復薬】の製作過程では、闇回復(ダークヒール)の魔法を封じ込めることが必須なのだけれど。

 アイテム複製装置を使えば、その過程を飛ばすことができるのかしら?


「も、もし、これらが可能なら……」


 私は生唾を飲み込む。【闇回復薬】の製作コストを大幅にカットし、大量生産が可能になる。


 うまくいけば、お金が稼げるだけでなく、魔王軍を飛躍的に強化することができる。


 私はクリスタルと瓶を材料投入口に入れて、しばし待つ。

 3分後、「ち~ん」という鐘のようは音と共に窓が開き、複製された【闇回復薬】が出現した。


「ほ、本当に、できちゃった……」


 瓶の蓋を開けて、【闇回復薬】を飲んでみる。

 癖になる甘さと共に、身体の疲労が吹っ飛んで行くのを感じた。


「うん……ま、間違いなく【闇回復薬】ね」


 魔力を消耗せず、クリスタルを用意するだけで、どんどん【闇回復薬】を作れるなんて夢のような装置だった。


「すごいなアルフィン。また、新しい設備を増やしたんだな」


 ランギルスお父様が興味深そうに顔を覗かせた。


「あっ、はい。【アイテム複製装置】です。今、試しましたが、クリスタルがあればいくらでも【闇回復薬】が作れるんですよ!」


「それは本当か!? なら配下たちに命じて、ダンジョンからクリスタルをどんどん採ってこさせよう」


「せび、お願いします!」


 今、魔王城のダンジョンに住んでいる魔物は3000匹くらいだ。

 最終的には、彼ら全員に【闇回復薬】が行き渡るようにしたいと思う。達成すれば、魔物たちの生存率が飛躍的にアップする。


 モンスターフルーツのステータスアップ効果との相乗効果で、無敵の軍勢ができるのじゃないかと思う。


「よし、さっそく行動する。部屋でくつろいで待っていてくれ」


 ランギルスお父様は、意気揚々と去っていった。


 今回で30万ゴールドのお金を使ったけれど、残り20万ゴールドがある。

 いよいよ、私の大本命。書庫を作る時が来たかも知れない。

 本に囲まれて、のんびりゆっくり生活する人生がいよいよ幕を開けるのだわ。


 そんなバラ色の未来に思いを馳せていると、頭の中に無機質な声が響いた。


『魔王城の設備を6つ作成しました。

 【魔王城クリエイト】Lv4の解放条件を満たしました。


 魔王城の兵器が作成可能になりました!』

 

―――――――


【魔王城クリエイト】


Lv1⇒神聖魔法が闇属性になる


Lv2⇒魔王城の兵器召喚


Lv3⇒魔王城の設備が作成可能


Lv4⇒魔王城の兵器が作成可能(NEW!)


Lv5⇒????


―――――――



『現在作成可能な兵器は以下の通りです。


・ダメージ床(費用10万ゴールド〜)

・ショックカノン(一基。費用10万ゴールド)


 作成可能な兵器は、条件を満たすことで増えて行きます』


 どうやら、またスキルが進化したらしい。

 新たに兵器を作成できるようだけど……

 今のままでも、特に防備に不安はないように思える。


 軍隊に攻め込まれているわけでもないし、兵器の作成は次にお金を貯めてからで良いかな。


 そう思った私は、次に書庫を作成しようとする。さあ、いよいよだわ。

 その時、慌てふためいたヴィクトルが飛び込んで来た。


「アルフィンお嬢様、大変でございます! 間者からの報告で、ヴェルトハイム聖騎士団5000が、聖王国を出立したとのこと! 奴らはここに向かって来ています!」

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