#7

朝起きると、鯨は天井ほどの高さまで迫っていた。

数日前から、ビルが鯨に押し潰されて崩れていった。その様は、まさに“世界の終わり”のような地獄のような光景だった。


あさひと2人で地面に寝転がった。

「あさひはもう、死ぬの怖くないのか?」

「うん。星夜君と一緒なら、あんまり怖くない。」

「そうか。」

「ねえ、私たち、一緒に天国に行けるかな?」

「分からないよ。でも、地獄に行ったって、俺はあさひについて行くよ。」

あさひはありがとうと言って笑った。

「死んだ後も一緒にいたいって願うのは、わがままなのかな?エゴ、なのかな。」

「今更俺たちがわがまましたって、なにも変わらないし、いいんじゃないの?」

「そうだね。」

「、、、、あさひ、俺、ずっと前からあさひのことが大好きだった。」

ずっと言いたかったけど、恥ずかしくて言えなかった。

「知ってた。私も星夜君のこと、大好きだよ。」

俺はあさひを抱き寄せて、キスをした。

暗くてよく見えないが、あさひは驚いた顔をしていた、と思う。

「地獄でもよろしくな。」

「ええ、こちらこそ。」


俺たちは手を繋いで“その時”を待った。

碌でもない人生だったけれど、あさひと一緒にいられた時間は幸せだったな。

(#7終わり)

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