7
「ほう、そのような店があるのか」
『化け猫亭』のことを知らなかった犬神は、興味深そうに顎をなでる。
「う、うちのみせには、ぼくいがいに、せっきゃくと、だいくしごとと、けんじゅつがとくいな、ねこまたがいるにゃ」
「評判いいんだよね。それできみは、飛脚ってわけね。ここの家の人に配達物があるのかな?」
「そ、そうにゃ」
月夜は胸元で抱える鞄に、視線を落とす。
「にゃ。えっと……平賀源次郎さまから、
「あぁ、お嬢のだね。あんなからくりを直せるなんて、変人発明家はやっぱりすごいな」
狢は感嘆の口笛を吹く。
「そ、それで、にもつをうけとって、ほしいにゃ」
「あぁ、だよね。俺が受けとるよ」
「お、おねがいしますにゃ」
月夜は鞄をゆっくりと地面に下ろして、中から、そぉっと自鳴琴を両手で取り出すと、貉に差し出す。
「はい。たしかに受け取りました」
「配達、ご苦労であったな」
「にゃ、にゃあ。じゃあ、これでしつれいします、にゃ」
月夜は頭を下げて挨拶をすると、鞄を急いで首にかけて、逃げるようにその場から立ち去った。
(こわかったにゃー! おこられるかと、おもったにゃ! もうにどと、ぶけやしきにはいきたくないにゃ!!)
内心でそんなことを思いながら、月夜は町を疾走する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます