6
月夜はそーっとそーっと鞄を手に抱えて歩き、ようやく源次郎の言っていた武家屋敷に辿り着いた。
大きな屋敷で、門前には
(す、すごいにゃ。ぶけやしきにきたのは、はじめてだにゃ。ど、どうやっていえばいいにゃ? にもつがあるっていって、しんじてもらえるかにゃ……)
月夜がどうしていいかわからずにいると、犬神の男が月夜に気づいた。
「そこの猫又。なにか用か?」
「にゃ!?」
突然、声をかけられて月夜は声をあげ、尻尾をぶわりと膨らませた。
「用がないなら立ち去れ」
「よ、ようならある、にゃ。ぼくは『化け猫亭』のひきゃくの、月夜ですにゃ。えっと、えっと……」
月夜は犬神の迫力が怖くて荷物があると言えず、持っている鞄と門に視線をいったり来たりさせる。すると貉の男が吹き出した。
「ぷっ。もう、犬神のせいで、怖がっちゃったじゃん」
「む。すまんな。もとから、こういう顔なのだ」
「にゃ、にゃ~」
貉は少しでも月夜に目線を近づけるため、しゃがみこんだ。
「俺、知ってるよ。『化け猫亭』のこと。忙しい人とか困ってる人に化け猫の手を、貸してくれるお店だよね」
貉の言葉に、月夜は何度もうなずく。
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