12

 喜助が慣れない手つきで材木を切っているなか、紅丸は次に使う道具を持ってきたり、材木を切ったりと、忙しなく動いていた。


「紅丸さん! 切れました!」

「遅いにゃ。やることはたくさんあるにゃ。きびきび働くにゃ」

「はい!」

「おまえは、返事だけは立派だにゃ。次はーー」


 喜助は紅丸に言われたように動き、時には最初から一人で行い、喜助ができなかったら紅丸が手を貸した。


「おめぇら! 飯の時間だ!」


 仁平の声が響き、昼食の時間であることを知らせてくれた。


「お昼だ! 紅丸さん、お昼っすよ! どんなお弁当ですかね」

「この辺りには、うまい煮物屋があったはずだにゃ。きっとそこの煮物を使った弁当だにゃ」

「わぁ! 楽しみっす!」

「喜助は元気だにゃー」


 紅丸は苦笑をこぼし、喜助の肩に乗った。



 昼食後も、紅丸は喜助を指導する。わからないことは、しっかり聞いてくる喜助に、紅丸も嫌な顔をせずちゃんと根気強く教えた。


(喜助は本当に素直だにゃあ。今までのやつは、一緒に働いている仲間でもない俺様に教わるのを、嫌がる連中ばかりだったのににゃあ)

「紅丸さん。どうかしたんですか?」


 喜助は紅丸の動きが止まったことに、不思議そうに首を傾げる。


「なんでもないにゃ。仕事終わりの時間まであと少しにゃ。気合いをいれて進めるにゃ」

「はいっす!」


 喜助は金槌かなづちを振り下ろした。釘にではなく、自分の指に。


「いっってぇぇぇぇ!!」


 紅丸は小さな額に手を当て、呆れたように首を横に振った。

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