3
八丁堀までやってきた喜助は、周囲の人に聞き込みをして、やっとのことで仁平が言っていた「化け猫亭」に辿り着いた。
「親方、八丁堀にあるとしか、言ってくれないんだもんな。見つけるのに苦労した」
喜助はふぅっと息を吐いて、こじんまりとした店を見つめる。
軒先に下げられた赤い
「結局、どういう店かよくわかんねぇっすけど、お店の人に聞けばいいっすよね。ごめんくださーい」
喜助は声をかけながら、店に入った。
だが、店の中には人がおらず、
(俺以外に客もいないみたいだし……というか、本当にここってお店なんすかね?)
疑問を抱きながら、喜助はもう一度、声をかけた。
「すんませーん。だれかいませんかー?」
「はいはい。すみません、お待たせいたしました」
店の奥から、一人の女性妖怪が顔を出した。頭には三毛柄の猫耳が生えており、背後では同じ柄の尻尾が揺れているのが見える。
「お待たせしてすみませんね。私はここの店主の化け猫、お蘭といいます」
お蘭は、喜助に軽く頭を下げた。
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