第35話

ルネには結婚願望が無いとは聞いていたが、それは前世からそうだったようで、だから生まれ変わったからと言って伴侶がいないことに不自由はないらしい。

「だってねぇ?友達がいて、友達の子供がいて、その子の友達がいて……別に僕が繋がなくたって、繋がっているでしょう?」

だからといって命を宿すということを馬鹿にするつもりもなく。

「だからちょっと考えてみるよ。ボクやアキよりもずっと年下だけど、ヒロたちにはいい先生と奥様ボン・プロフ・エト・ボン・マダムだもの!」

「え?年下……いくつだっけ、先生って?」

「確か22歳?」

「ああ、僕たちのひと回りしただっけ」

「ヒトマワリ……えぇと、君たちはエトっていうので年回りを数えるんだっけ?ダース単位って意味じゃなかったよね?」

「そうそう。ねずみ、うし、とら…って、由来は中国だけど」

「あ、そう……んだ……」

確か奥さんのイリーナさんはロメリア先生の幼馴染みで同い年のはずだ。

であればだいたい16歳から19歳が適齢期と言われているこの世界、いやこの国においてはちょっと遅めの結婚と出産ということになる。

それでも22歳──

「まあ初産が遅いのもどうかとは思うけど、早すぎるとそれはそれで母体への負担は計り知れない。ぼく個人としては15歳から16歳でも早いと思うから、できればちゃんと身体が安定する18歳ぐらいから25歳ぐらいの初産の方がいいと思うんだよね」

「あれ?でも、ブショウって確か11歳でコドモ産んだとかってなかった?」

「産んだのは奥方の方ね!そりゃ産めないこともないし、それって現代社会でも児童婚として問題提起されていたでしょ?本当男って出産のときは役に立たないし、幼すぎた母体への負担が大きすぎて赤ちゃんと共に死亡ってこともないわけじゃな……い……」

そこまで話していて、さすがにこれはヒロトの前でするには生生なまなま過ぎるとかと、アキは口を噤んだ。

「あ、うん。そっか。そうだね。でも、どうにかするんだよね?ルネ」

「……あ~、う、うん。カメラとモニターじゃなくて、手のひらでお腹に手を当てて電波を送って、返ってきた像を反対の手のひらから念写みたいな感じで写せないかな~……って」

「手……か……そのまま電波形を直接……感電紙みたいな?うん、僕もちょっと考えてみようかな……」

なるべく平坦な声でヒロトが最初の話題に振り戻し、ルネもアキもそれに乗ってくれた。

確かに『男』にできることはけっこう少ないようだった。



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