第27話

お見合いイコール結婚というわけではないだろうというのがルネとヒロトの結論で、デラを王都へ連れて行くというのを十六歳ではなく、お見合いが終わったらすぐ──ということにしようと決めた。

もっともまだ「そうしようか」という話段階ではあるので、具体的なことが決まってから動こうというのに変わりはない。

だいたい本人がいないのだ──

「……そう言えば、ルネから見てどうなの?デラの才能って」

「ん~?そうだねぇ……僕とは系統が違うから、本当は違う師匠についた方がいいんだよね。たぶんかなり攻撃系が得意な魔法使いになれると思うよ?」

「それって……やっぱり、冒険者向きってこと?」

「そうとも言えるけど……本人がそうしたいかわからないけど、実際『宿屋の主人』に収まるにはもったいない才能だとは言えるね。そして多分、グラ君の方が向いてるんでしょう?」

「そうなんだよなぁ……変な家長制度とか長男至上主義がなくなれば、次男が家を継ぐってのはアリになるはずなんだけど……」

「何でどこの世界でも『制度』っていうのが崩れるまで、後継者廃嫡以外では柔軟に対処できないんだろうねぇ」

そんな話をしていて気が付いたが──

「そういや、ルネって前世ではどうだったの?長男?」

「ん?いや、次男。それこそチャムシィ君じゃないけど、お兄ちゃんが八百屋を継いでるよ?」

「え?!人ん家のこと言えないじゃん!!」

ズルッとヒロトの身体が傾く。

「ふふっ…いいんだよ。それこそピッタリな場所……えぇと、何かニホンゴでそんな言葉、あったでしょ?」

「……適材適所?みたいな?」

「そう!それ…?かな?お兄ちゃんは八百屋が好きで、野菜を愛してて、見る目のある人が大切だったんだ。ボクはニッポンが好きで、カトゥーンが好きで……野菜をそれほど愛せなかったから」

そう言いながらルネは、何かニコニコと野菜に話しかけているらしいチャムシィを眺めた。



ジャガイモはすぐに食べるのではなく少し置いてからの方がいいということで、とりあえず掘り出したニンジンや他にも収穫したカボチャやナスを教室の中に運び込む。

「はぁ~……良く採れるようになったねぇ。やっぱりチャムシィの魔法のおかげかなぁ」

確かに夏にもトマトやナスはよく実ったのにずいぶんと獣に狙われて収穫数がグッと減ってしまったが、ルネから野菜育成や妨害する魔術で、今回の収穫では祭り状態である。

「しかもすっごく質がいいんだ……親父がこれ見たら、仕入れ先をこの教室に変えるって言いだしそうだよ」

「そんなに量がないじゃん……」

「そうなんだよねぇ……何とかできないかなぁ……」

チャムシィが真剣に考え出したのを見て、ヒロトは確かに『適材適所』というのは未来に繋がるファクターかもしれないと考えた。



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