第15話
派手派手しいルネはどこから見ても目立つようで、しかも側にヒロトまでいると知って、やはり母であるジーンが突然湧いて出てきた。
「見つけたわよっ!あんたさっき、あたしに魔法かけたでしょっ?!せっかく綺麗なブローチを父さんが作ってくれたのに……弁償しなさいよっ!ヒロト、あんたも同罪よっ!」
「ヒッ?!」
大声で喚くド派手な赤毛の女に、チャムシィが怯えてルネの陰に隠れた。
まさか他にも子供がいたとは思わなかったのか、ジーンは乱暴な口調で挑みかかったのを後悔するような表情を見せる。
「チッ……どうしてこんなところに他人がいるのよ……さ、さっきあたしを怪我させたことはまた後で話すわ!ちゃんとロベルトにも言いなさいよ?!まぁ……新しい装飾品をあたしに贈りたいって言うんなら、今回のことは水に流してあげてもいいけど……?」
チラッと横目でチャムシィを見るのは、彼女なりに色っぽいと思っている流し目らしいが、いかんせんヒロトと同い年の少年には意味も色気も伝わらず、母親より少し年下ぐらいの女性の色香に惑わされるはずもない。
かえって怯えてルネのマントを掴んで、大きな身体をさらに丸めて隠れようとする。
「ふぅん……戯言はそれだけ?ボクはこの子たちを学習室に届けないといけないからね。そこをどいてくれないと、
ニヤッとルネが笑うとジーンはサッと顔を青褪め、また吹き飛ばされてゴミを入れておくバケツやら酒屋の空き瓶が並んでいるところへ飛ばされて本当に怪我をさせられてはたまらないと、そそくさと逃げ出した。
けっきょくマントは使わずにデラとグラの兄弟とも合流し、今日は保護者付きで教室に行くことを簡単に説明する。
「まぁ、君たちが嫌じゃなければ、しばらくはこうやってボクが送り迎えしたいんだけど……ダメ?」
「ダッ、ダメじゃないれすっ!!」
慌ててデラが叫んで噛むのを聞いて、ヒロトとチャムシィはこっそりと笑った。
グラは知らないが、実はデラは魔法使いに憧れていて、可能なら父の跡を継いで宿屋の主人になるよりもそっちの道に進みたいと思っているのだ。
逆にグラはこの町を出たいとは思っていないため、兄が冒険に出ても安心して帰ってこられる拠点として宿屋を守っていく役割を背負うことになっても、喜んで主人を務めるに違いない。
問題は肝心の父親がそんな兄弟の考えや希望をまったく知ろうともせず、単純に長男が跡継ぎで、次男がどこかへ出ていくという将来図を描いていることだ。
「そっかぁ~……デラ君は魔法使いになりたいのかぁ~……」
「ハッ、ハイィッ!!で、できればルネさんの弟子になりたいです!」
父親を説得するよりも実力行使の方が手っ取り早いと考えているらしいデラは、自分の希望を猛プッシュしているが、ニコニコ笑っているルネの本心はわからない。
一緒に暮らしているヒロトにも、わからない。
だが明確に断ることも、受け入れることもせずに子供たちは教室についてしまい、いつものように出迎えたロメウス先生がビックリしているのを丸め込んで、ルネは今日のところは見学者という形で教室の護衛任務に就いた。
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