開戦による規制
皇海はドレッドノートに匹敵する高性能な艦のため、海援隊も帝国海軍も大量建造を決定し三番艦、四番艦が国内で建造中だ。
これは純国産軍艦建造のために日本国内で全ての部品製造が行われている。
軍艦は購入できても修理が出来なければ意味が無い。さらに二十年近く運用するとその間に近代化改装が含まれる。その際、建造に匹敵する技術を持たなければ上手くいかない。
なにより幕末以来、海外からの脅威に対抗するべく近代化していた明治政府が軍備の国産化を進めている。戦艦を含む大型軍艦も国産出来なければ日本は維持できないと考えており、日本国内での建造となった。
日本初の一万トンを超える大型艦であり、白根の時は無事に進水できるか在留外国人の賭けの対象になったほどだが、無事に成功させ日本が有力な国である事を証明した。
その勢いで全ての部品を国内で建造することになった。
この方式は成功し、この後、超弩級巡洋戦艦金剛型の時も同じ方式が採用される事になった。
だが日露開戦が迫ったため国内だけで建造が追いつかないため、五番艦、六番艦もイギリスに発注していた。
「突貫工事をしたが無理だった」
日露開戦が迫り皇海型三番艦から六番艦も大急ぎで建造させてたのだが、開戦には間に合わなかった。
日英同盟を締結していたが、締結しても条約では好意的中立までで、ロシア以外から宣戦布告されなければイギリスは参戦しない。
一見薄情で、イギリス有利な条項だが、もし日英同盟がなかったら、ロシアの同盟国であるフランスも参戦し、さらに植民地獲得に野望を燃やしているドイツも参戦してくる可能性があり、日本の勝利など無いも同然だ。
同盟したことでロシア以外の欧州列強をイギリスが抑えてくれている、というのも利点だった。
そして恐ろしいのは、イギリスが参戦した場合、ロシアの同盟国となるフランスも参戦し、欧州でも戦争が始まってしまう可能性がある。
そのため、フランスやドイツも下手な行動に出られないし、イギリスも下手な行動――参戦することができない。
以上の点から、イギリスは日露戦争で好意的中立を維持している。
多少の目こぼし、ロシアに対するサボタージュや圧力、日本への情報提供、密かな軍需物資の提供は行ってくれる。
だが、イギリスで建造させた戦艦を戦争中の日本へ引き渡すのは明らかな中立義務違反であり、世界から糾弾されてしまう。
当時の戦艦は、国家権力の象徴、二一世紀で言うと核兵器にも似た扱いであり、戦艦の隻数が軍事バランスを左右している。しかも最新鋭で超絶した性能を持っているのならなおのことだ。
だから戦争中は当事国への武器輸出を禁じた条約に明らかに抵触する戦艦の輸出はできない。
「まあ戦艦の数では国内建造もあるから大丈夫だがな」
三番艦、四番艦を国内建造したのは開戦に間に合わず、調達できないことを考慮してのことだった。
更に建造を考えていたが国内の余力が無く五番艦、六番艦は英国で建造される事になった。
勿論、その不安があったので新たに七番艦、八番艦が建造されていた。
他にも装甲を薄くして速力を高めた巡洋戦艦筑波級の建造が行われている。
度重なる軍艦建造に国内では不満があったが日英同盟で太平洋海域でロシアを上回る排水量を維持することが求められていたため、ロシアが発表した太平洋艦隊の増強に対抗するべく海軍力を増強せざるを得なかった。
秘密条項でイギリスのライバルであるフランスの東洋海軍戦力もロシア太平洋艦隊と合算するように求められているので、建造は仕方なかった。
他にも様々な兵器を購入していたが、開戦で日本へ輸出できなくなった。
開戦を悟らせないためにあえて購入した武器もあるが、無駄になって仕舞った。
輸入できず、戦場へ投入できずに倉庫で死蔵されている兵器群は皇海級五番艦と六番艦をはじめ、軍艦数隻、陸軍兵力で数個師団分ぐらいはある。
これらの武器が、終戦直前に大活躍するのだが後の話だ。
「皇海の建造もそうだがよく調達できたな。特に資金面で」
「皇海の方は簡単だったよ。オプションを付けた」
「なにを売ったんだ?」
「先日の戦闘データ、戦闘詳報だ。発砲速度、命中率、故障箇所、燃料消費など、あらゆるデータを集めて送る取り決めをしている」
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