いつか、私を選んでね。

@tsukishima-kaede

第1話

好きになるつもりはなかった。

だって、趣味がキャンプって、日焼けを年中恐れている私とは全く合わない。

今思えば、だから連絡先を教えてしまったのかもしれない。


去年の夏。

私は通訳として派遣された会社で、彼に出会った。

とても優しそうなひと。そういう第一印象だったような気がする。

彼が課長だということや、私より10歳年上であることは後で知ったが、

初めて会議で同席した時には、30歳くらいの優しそうなお兄さんにしか見えなかった。


その会議は、散々だった。

よく誤解を受けることだが、英語が話せればなんでも訳せるわけではない。

専門用語が飛び交うような会議では、当然その用語の意味の理解や、現在の状況を理解しておく必要がある。

でもそんなことお構いなしに会議の開始10分前に依頼されたものだから、

私はただだパニックで、スピーカーの向こうで捲し立てる早口のインド人の言うことが、英語であるのかどうかさえ分からないくらいに混乱した。


「本当に、すみませんでした、、」

会議が終わってすぐ、私は会議の主催者である彼に謝った。

うんざりされたかな、、そう思った。

「いえいえ、とても助かりました。またぜひお願いします。」


私は、次の日から彼を目で追うようになっていた。







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