最凶レディース総長、最弱いじめら れっ子令嬢に転生~アンタの無念はアタシが晴らす!~
林 真帆
プロローグ
――一九XX年、K県某所。
この日、K県最強レディースを決めるべく、二つのチームが集結していた。
夜叉姫 VS 暗黒女帝
今、戦いの幕が切って落とされた。
『夜叉姫』の初代総長姫乃樹アリスは、その容姿の美しさもさることながら、情け容赦ない暴れっぷりで喧嘩無敗を誇り、『最凶』の名を欲しいままにしていた。
喧嘩に強いだけではなく、仲間思いであるアリスは、多くの不良少女たちの憧れで、まさにカリスマ的存在であった。
最近、チームに入ったミコも、そんな不良少女の一人だ。チーム内で一番年下ということもあり、アリスはミコのことを特別気にかけていた。
そんなミコを背後から狙う者がいた。
「ミコ、危ない!」
アリスはとっさにミコを突き飛ばした。その瞬間、ミコに振り下ろされるはずだった警棒が、アリスを直撃し、アリスはその場に倒れ込んだ。
「総長!」
ミコの声が遠くで聞こえる……アリスはそのまま気を失った。
アリスは夢の中にいた。
夢の中でアリスは、一人の少女に出会った。
しかし、アリスは、その少女に見覚えはなかった。
少女がどんどんアリスに近づいてきて、とうとうアリスの目の前にたどり着いた。
アリスは少女に話しかけようとして、言葉を引っ込めた。少女は見た目から察するに、日本人ではない。だから日本語で話しかけても通じそうにない。
アリスがどうしていいかわからず戸惑っていると、少女がアリスの手を握りしめてきた。
するとどうだろう……アリスの中に少女の記憶や思いが大量に流れ込んできた。
「アンタ……酷い目に遭ってきたんだね。アンタの無念はアタシが晴らしてやるよ」
アリスがそう呟くと、少女は、アリスの中に吸い込まれるようにして消えた。
アリスは、ベッドの中で目を覚ました。
すると、駆け寄って来る少女が一人。
「ミコ!」
アリスは少女を涙ながらに抱きしめる。
「ミコ! アンタ、無事だったんだね……」
「あの、お嬢様……?」
「何をふざけて……え?」
アリスがミコだと思って抱きしめていたのは、全くの別人であった。
確かに見た目というか雰囲気は、どことなくミコに似ている。しかし、髪の色や目の色は異なっていた。
「うっ……」
「お嬢様! どうされました?」
急な頭痛がアリスを襲った。アリスの頭の中で、夢の中での出来事が高速で再生されていた。
「鏡、鏡はどこ?」
「お嬢様、ここに」
差し出された鏡を見て、アリスは驚いた。
鏡の中にいたのは、夢の中で出会った少女であった。
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