潜入成功
人造人間、逆潜用に製造された彼らの強みは身体改造への適応性だ。体を機械に置き換える際の拒否反応が減るように設計されており、それ故に常人より遥かに高い拡張性を秘めている。
『こちら基地本部!現在改造人間の集団と交戦中、救援を求む!』
『ガガッ、ピー、ピー』
『クソッ、外部への通信が遮断されてやがる!』
『もう持ちません!』
それ故に2040年の自衛隊程度で対応ができるわけもなく。福岡県にある航空自衛隊基地は人造人間達により襲撃を受けていた。圧倒的な戦闘力を誇る彼らが自衛隊を蹂躙していく。
最上位人造人間である
音が消える。彼を囲んでいた戦車3台、歩兵12名が赤い光を帯びて融解、ズルリと中心からひしゃげるように崩壊した。だが目標は自衛隊への襲撃、ではない。
「戦闘機の奪取は?」
『間もなく完了します。エイデンさんの搭乗する機体は343番です』
「了解、こちらはもう少し引き付けておく。しくじるなよ」
『承知』
そもそも改造人間によるテロ行為である、ということが明らかになると困る。それは新たな技術への忌避、2055年の作戦をより失敗に導く種となってしまうのだ。だから言い訳が必要なのだ。ただのテロリストがやったと言い張れるような状況が。
故に戦闘機という2040年の兵器を使って国会議事堂に自爆特攻を行う。実際は寸前で脱出しそのまま殺害を実行するという形なのだが。
暗殺をしないのにも理由がある。それは証拠を隠して暗殺するにはあまりにも無理があるのだ。いくら改造人間でもそもそもの国会議事堂の内部構造や警備の仕組みを把握しバレないように暗殺するのは難しい。
より正確には、可能だったかもしれないが分裂体の存在により不可能になったのだ。このタイムリミット下で暗殺を綺麗に実行できない以上、力尽くで押し通すしかない。案外大きな事件の方が火消しは容易なのだ。
また理由はもう一つあり、『焦耗戦争』の始まりの舞台となる東京の戦力を削りたくは無かった。
ただそれだけの理由で彼らはこの作戦を実行しようとしていた。それだけの理由でこの基地の自衛隊員は死ぬ。
◇
一方でまた、東京へ向かう人造人間達の前にも壁が立ちはだかる。
「お前らは本当の生死をかけた戦いってやつしたことないんだろうなぁ」
「したことはあるだろう。だが俺達と比べて余りにも純度が低い」
立ちはだかっていた、という表現の方が正確であろう。路地裏には何人もの人影が倒れている。だがその中の一人、パワードスーツを着た男が最後の力を振り絞り立ち上がる。2060年の技術を用いたその武装はビルの壁を突き抜け人体を粉々にする脚力を発揮し人造人間の身体に突き刺さる。
かに思えた。
「え」
「遅いんだよ。多分吸収したHereafter社の奴が裏切って情報流したんだろうがその程度でどうにかなるわけねぇだろ。こっちは20年かけて準備してるんだ」
それより早くパワードスーツの腹部に光の如き速さで蹴りが突き刺さる。ただ踏み込み蹴る、その一瞬で
速度に特化したその細身の体は単純な速度だけで亜音速まで到達し敵を叩き潰す。ただ速い、それだけが最強の武器となるのだ。
彼の背後には8人の人造人間。他の人造人間達は別の方角から人目につかぬよう目的地点の東京を目指している。
初期地点の指定が上手く行かないことは想定済みだ。だからこそ2040年の『革新派』に車を用意して貰っている。連絡では戦闘機の確保も完了しまもなく発射、日本は大混乱に覆われるだろう。
だがこのルーカスとエイデンとデュランと、そしてグレイグ。最上位の人造人間4人と143人の人造人間。合わせて147人による強襲に平和ボケと内輪揉めしかできない今の日本政府が勝てるわけが無かった。
◇
そして最後の部隊、
だがその程度問題ない。この時代に戦闘特化の21人の改造人間を揃えるなどまず不可能。国ですら保有数はいまだ3桁に届いていないのだ。
そう、処理は容易なのだ。
「実は結構恥ずかしかったんだよ。あれだけ彼の前で啖呵を切っておきながら君一人を処理するのに先輩の手を借りないと行けないとはね。幸いにもバレていないようだから良いんだけれど、一方で私のプライドというやつは傷ついたままなんだ」
「誰だ!どうしてそうなっているんだ!」
「言うまでもない。オレンジの下僕さ。そうしてどうしてか。どうしても何も殺そうとしているから殺されたんだろう? ましてやゲームだ。ほら気を抜いて。君たちが殺した人間は未来永劫二度と蘇らないんだけどね」
グレイグと20人の人造人間の前に一人の少女が立ち塞がる。美しい、白髪白眼の少女だ。ただしその手はガントレットで覆われ血にまみれている。彼女はゴミを捨てるかのように2つの肉塊をグレイグの足元に投げつける。
作戦開始より68分経過。残存する人造人間、41名。
白犬レイナ、106人を既に殺害完了。
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