8話.師匠による勉学指南
次の日も休日ということで、お昼からの特訓となった。
澪さんが指定した場所は図書館だ。
僕は朝にランニング、筋トレを済ませ、澪さんとの勉強会に挑んだ。
身体は昨日の筋肉痛と今朝の運動のおかげで、いつもより歩くスピードが半減していた。
何とか待ち合わせ時間ギリギリに到着し、図書館前でベンチに座り、本を読んでいる澪さんを見つける。
澪さんの服装は昨日の革ジャンと打って変わって、ラフな格好で眼鏡をかけ、いかにも勉強できそうなギャルに見えてしまう。
「澪さん、お待たせしました」
「お、来たね」
本を閉じ、顔を上げた澪さんはとても綺麗だ。
「澪さんって、眼鏡かけるんですね」
「これはねー、伊達メガネです。これかけてると頭よさそうに見えるでしょ? まあ、実際に賢いんだけどねー」
とケラケラと笑う澪さんだったに正直、賢いイメージがなかった。
「……そうですね」
「あ、僕の事、疑ったなー? まあ、そう言われると思って成績表をもってきたのだー。この成績表が目に入らぬかー」
澪さんが印籠を見せるかのように差し出してきた成績表を見て、思わず土下座してしまう。
その成績表は全教科九十八点というすごい成績表だった。
「ははー、申し訳ありません。見た目で判断してしまいました―」
「全くだねー。後でジュースを奢って貰わないと気が済まないね」
俺の反応に気分が良くなったのか、澪さんは腕組みをしながら、鼻の穴を少し広げている。
「かしこまりました」
通行人が横目で怪訝な目を僕達に向けながら、通り過ぎていく。
「……行こっか」
「……そうですね」
流石の澪さんも恥ずかしかったのか、僕達は、茶番劇を切り上げて、図書館の中へと入った。
図書館に来るのは小学生の読書感想文で訪れた以来だろうか。
懐かしさを覚えながら、先に進んでいく澪さんについていく。
澪さんはカウンターに行くと、職員と話をして、何やら紙を受け取っていた。
紙を手にして、向かった先は学習室と書いてある部屋だった。
中に入ると、複数の机と椅子が均等に配置され、壁には時計がかかってあるだけで教室を連想させる部屋だった。
「澪さん、ここは?」
僕は小声で話しかける。
「もう普通に話しても大丈夫だよー。ここは学生とかが勉強に使う部屋だよ。本が置いてあるとこだと、喋っちゃダメだから、個室を借りたんだー」
「図書館ってこんなところもあるんですね」
「予約は必要だけどねー」
僕はとりあえず持っていた机の横に荷物を置き、椅子に座る。
そこに澪さんがよいしょと、机を運び、僕の机の横にくっつけてきた。
「さて、まずは君の成績を見せてもらおうかな?」
「こちらになります」
事前に持ってくるように言われていた、前日のひどい成績表を見せた。
「これはなかなかだねー。テスト勉強はしたの?」
「勉強してそれなんですよね……」
「ほうほう、ちょっとノート見せてくれるかな」
「ノートですか?」
バックからノートを取り出し、澪さんに渡す。
ノートをパラパラとめくり、ほうほうと頷いている。
何か納得し、ノートを閉じる。
「壮太くんが勉強しても点数が低い理由が分かったよ」
ノートを見ただけで、僕の長年抱えている問題を見つけたというのですか。
「い、一体、何が問題なんでしょう……?」
「ズバリ、ノートを綺麗に書きすぎが問題だねー」
「? それはいい事なのじゃ?」
「だめだよー。ノートを綺麗に描くのに集中して、先生の話聞いてないでしょ?」
「あまり聞いてないですね……」
「ノートは適当に書いて、あとは先生の話に集中しないとね。そっちの方が重要」
「そうだったんですか……。てっきりノートを綺麗に書いておけば、後の勉強が捗るかと思ってました……」
「授業中は先生の話をしっかり聞いて、ある程度ノートを書く。そして家に帰って、先生の話を思い出しながら、ノートをまとめる。そのやり方にするだけでだいぶ変わると思うよー」
「勉強になります」
「あとは僕と週に二、三回マンツーマンで壮太くんに教えていけば、勉学は何とかなるだろうね」
「……どうして澪さんはこんな僕に手を貸してくれるんですか?」
「親友のソウタくんに手を貸さない親友なんていないよ」
さも当たり前のように答えてくれる澪さんはとてもかっこよかった。
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