第5話 チビっ子探偵タークちゃん5

エリーちゃんが近づいて来て声を掛けてくれた。




「タークちゃん大丈夫?」




「な、なんとか……

それより、後ろの荷物降ろすの手伝って。

もう限界だよ~。」



エリーちゃんとクリス君に手伝ってもらいながら録音機を降し、携帯電話ポケテル君で僕に指示を出していたリョウ兄さんに文句を言った。




「リョウ兄さん、コレ重過ぎるよ!

肩に食い込んで痛かったんだからね。」


『すまん、すまん。次までにはもっとコンパクトにするよ。』



「ところで、衛兵隊が僕の救助に来れない程の【別の重大事件】って何?」



僕の質問に答えてくれたのは、リョウ兄さんじゃなくて、エリーちゃんだった。



「大変なの!今、銀行で【立て籠り事件】が起こっていて、運悪くたまたま見学に来ていた初等部の1年生が人質になっているわ!

最悪な事に、その人質の中にケイトがいるからシルバーだけじゃ中の様子がわからなくて…… 。」



うわぁ、最悪だ!

僕達じゃ猫語は解らないし、シルバーを行かせるって事は、侵入経路が狭過ぎて大人は通れないって事か。



この携帯電話ポケテル君がもっとコンパクトだったら、シルバーに持っていってもらえたのになぁ。



賢い猫だから教えたら、スイッチくらい、いれてくれそうだけど。



まだバックくらいの大きさがあるんだよね。

さっきは犯人のおじさん達がまだ出来たばかりの携帯電話ポケテル君の事を知らなかったから上手くいったけど。



「シルバーと意思疎通する為に、文字と数字を書いた紙にコインを置いてやってみたけど、途中から転がして遊び始めちゃって、ダメだったのよ……

一応、ケイトの無事と犯人が3人なのは確認できたわ。」



まぁ猫だから仕方ないよね。

それにしてもシルバーって文字も読めるんだ。



「どうやら【銀行強盗】をして逃走しようとして、ターク様の所に向かっていた衛兵隊と銀行前で鉢合わせしてしまい【立て籠り】に発展したらしいのです。」




更にクリス君の追加説明を聞いて、僕はある可能性に気がついた。



犯人が3人で【銀行強盗】をして逃走に失敗、【立て籠り】に発展だって?



「エリーちゃん、犯人はたぶん後1人はいるよ。

盗んだお金を運ぶ為の逃走馬車車輌の御者がいるはず。

立て籠り事件になったから、流石に逃げただろうけど。」



エリーちゃんは早速、僕の推理を元に侯爵家の騎士と兵士に、逃走馬車車輌の特定を命じた。




こういう姿を見ていると、まだ11歳でも流石は侯爵家の令嬢だと思う。

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