第5話

少女が目を開けると、三度目の“見知らぬ天井”があった。


その直後「キミは、どこにいましたか?」と奇術師に声をかけられる。


「あなたは誰なの?」

「私を閉じ込めたのはあなた?」


L1とは違い、奇術師に対して怒りを込めた問いをぶつける。


「私の役目は、キミを外に出してあげることです」

「出られてないじゃない?」

「それは、キミの責任です」

「私の・・・責任・・・?」

「ここは現実です。タネも仕掛けもありますが、純然たる現実です。陳腐で使い古された精神世界のようなものではありません」


「・・・現実?」


「はい。タネも仕掛けもある現実です」


少女Aは、自分の頬をぶって痛みを実感する。


「実にキミらしい、現実の確認方法ですね」

「あなたは、私のことをどれぐらい知っているの」

「全てです」というと、奇術師は少女の姿を消した。


そして、


“あなた”に向けて



「思い出しましたか?」



と聞いた。

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小説 シニフィエ Brain B. @kislegaloffice

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