WB LIE Ⅲ-Ⅲ
翌日、WB LIEに出勤して来た里佳子さんに所長から昔の出来事を聞いた事を伝えた。里佳子さんは照れた様な顔つきで反応した。
「そう。聞いたんだね……。びっくりしたでしょ? まさか私がWB LIEの依頼人の第一号だったなんて」
「確かに驚きましたよ! ただ黒川さんの時に出た話があったんで、そこで繋がった感じはしました。自分が経験していたからあんなに真剣味があったんですね」
「失礼な! 私はいつでも真剣勝負よ!」
里佳子さんはムッとした様にして言った。やはり僕に対しては導火線が短い。
「す、すみません。的確なアドバイスをって意味だったんですが……。ちなみに、今菫さんとはどうなっているんですか?」
「菫ねー。あの一件があって私たちは成長出来たと思うよ。菫も私につきっきりじゃなくなったし」
「そうなんですね。良かった。僕も嬉しいです」
「何で君が嬉しいのよ。適当な事言って……」
「いやいや、本心ですよー」
あまり僕を信用していない顔をしている。
「まぁ、いいか。菫はその後ずいぶん社交的になってね、もともと愛嬌ある子だったし。今じゃ一児の母だしね!」
「おぉー。おめでたいですね!」
またもやひと睨みしてくる。お決まりの反応だ。
「ただ、子供にベタベタでね。子離れ出来るか心配だわ……」
そう言う里佳子さんの顔は、言葉とは裏腹に嬉しそうだった。菫さんとの関係性が良い事を伺わせる。
「過去に行けた事には感謝しているよ。そのおかげで新しい生命も誕生したしね。本当に良かった。もちろん所長にも感謝してるよ!」
里佳子さんも僕と同じく後悔のウソを解消する事で成長する事が出来たのだ。傷を負い、それを自分なりに消化する事で成長に繋がる。
その自分なりの消化へのきっかけになる後悔。後悔する事が無ければ気付かなかった事も多いのだろう。
WB LIEはこのきっかけが無ければ現状は発動しない。発動条件を持たずに悲しみに耐えている人々はこの恩恵に預かる事が出来ない。
そう考えると自由に過去へ行く事が出来る様になる事は所長の言うように喜ばしいものになるかも知れない。
しかし、それに簡単に首肯出来ない僕も依然として存在していた。
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