第190話
昨日、みんなの意見をまとめてからああでもない、こうでもないと配置を考えデザインを決めて。
出来上がったのはもう夕方近いこの時間。そろそろ空がオレンジ色だわ。
「誰も作らないってことは、不便なことがあるからだよね。知ってた」
出来上がったキャンピングカー? を見て私は呟いた。
全員が乗れる広さで欲しい機能をつけていったら、中身は普通に住めそうな状態になったんだけど、その外見がね、なんていったらいいか、そうね例えるならカタツムリ。
家を背負ってる感じの、カーブになったら斜めに倒れちゃうやつ。
はっきりいって不恰好だと思います。
そう言いながらもみんなで中に入ると、広さにびっくりされた。
運転席にも後部から行けるようになってる。
「まあいいんじゃないかな」
杉原さんが欲しかった機能はビールサーバー。
麦やホップなどの材料を入れるとビールが生成されて出てくるという、ものすごく新鮮なビールが飲める、四人の大人に大人気なこの機能。
地球で飲むビールとは味が違うらしいのだけど、私はお酒を飲んだことないからわかりません。それでもこの世界で出されているものより美味しいらしいです。
ジェイクさんは一口飲んで叫びました。
旨すぎる! って。
「キリ……、なんでも肯定するのはお前の美点だけど、これはよくないと思うぞ」
上条さんの希望は自動運転。
マップを表示すると障害物があるときは避けながら進む。免許は必要ないんだから私たちでも運転できるのに、どうしてもこの機能はつけて欲しいと言われてしまった。
運転席にナビをつけて、誰でも使えるようにしてみたの。
「そうですね、ちょっと美意識に反するというか」
夕彦くんと圭人くんの欲しいものは同じで、オーディオセットだった。私たちが聞いていた音楽や両親や叔父さん、叔母さんたちの持っていたCDなどは複製できた。
テレビやラジオで聞いただけの曲はダメでした。創造でもなんとかならないことってあると知ったわ。
ついでというか、大きめモニターも作ったから私が触れたことのあるDVDも揃えました。……圭人くんの持ってたちょっとえっちなのも出てきたんだけど、捨てていいかな。捨てる前に杉原さんに確保されたけど。
「はっきり言っていいのよ、夕彦」
光里ちゃんは大きめキッチン。
私とサツキさんも似たような感じだったので、キッチンに夢を詰め込んだ。大きなオーブンと食洗機は小屋改め家にもつけているのと同じもの。冷蔵庫や備蓄庫は不要なのでその分コンロを4つ口にしたり誰でも使えるように鍋を揃えた。
「夢が詰まってていいと思うわ!」
「よくわからんが、走れるんだろ? これでいいんじゃねえか?」
「誰も見れないんだからいいんじゃね?」
サツキさんと、車がよくわかってないジェイクさん。圭人くんもアバウトだわ。ソファの座り心地はどうかなと、腰掛ける。
うん、硬くもなく柔らかすぎないちょうどいい感触。カバーの手触りは飛行機のシートを参考にしてみました。
「うーん、魔法の補助もあるし倒れたりはしないと思うの。問題は森の中だけど」
「馬車が通れる道があるから、それを行こう。ただ、竜が住む森は徒歩で行くしかない。前回はそれで体力を消耗したからまめに回復しような」
杉原さんがPTで行ったときは森の魔獣が強かったと聞いた。いざとなったら木を切り拓いて家を出すことで話は決定。回復重視でいかないとね。
「よし、これで足も確保できたし。行きますか」
圭人くんがやる気を出して声をかけると、私たちも頷いた。家は私のストレージの中にあるからいつでも出発できるよ。
「移動中に圭人はやらなきゃいけないことがあるからな、忘れてないだろ?」
「もちろん」
杉原さんと圭人くんの会話にサツキさんが首を傾げながら疑問符を浮かべてる。夕彦くんがそれに応えた。
「圭人は勇者なので、圭人の作った剣だけが魔王にとどめをさせるんですよ。なので移動中に聖剣を作らないといけないんです」
「聖剣の材料は揃ってるのかな?」
上条さんが圭人くんに尋ねる。
「あとは星鉱石だけなんですが、多分、材料は見つけました。これを夕彦に加工してもらいます。頼むな」
「あの時の岩でしょう? 了解」
国境の峠で道を塞いでいた岩。圭人くんが必要って言っていたのはそういうことね。
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