音音音
シヨゥ
第1話
敏感だからか音に悩まされることが多い。
例えば住んでいるマンション。
隣人は今流行りの実況者らしく今日も声が聞こえてくる。
反対側に耳を傾ければこちらはバンドマンらしくギターの音が聞こえてきていた。
天井に意識を向けると今日も運動会。子沢山のご家族だ。
趣味嗜好や子宝にケチをつける気はさらさらないが耳栓、イヤホンなしでは暮らせそうにない。
例えば職場。
隣の席の上司はいつもカリカリ。机を指先でコツコツ叩く音が聞こえる。
反対側に耳を傾ければ話し好きの後輩達がペチャクチャ。
お向かいさんはやり手のベテランだ。チームが崩壊しないのも彼女のおかげ。だけれどもキーボードを叩く音がものすごい。
1時間も席にいたら気が狂いそうでちょくちょく席を外す。そうでもしなければやっていけそうにない。
例えば名前。
キラキラネームとかいったっけ。ぼくの名前はそれだ。
呼ばれるたびに恥ずかしくて「名字で呼んでくれ」となんどもでも言う。それをおもしろがってか名前呼びが定着してしまった。
ただただ恥ずかしい。その音を聞くだけで寒気がする。
最近は敏感だからなのかと疑問に思うこともしばしば。住まいを変え、仕事を変え、名前を変え、違う人間として生きるのも悪くないんじゃないか。そんな考えが頭をもたげる桜の季節。ぼくの門出はまだ遠い。
音音音 シヨゥ @Shiyoxu
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