第64話 森の狼
ディザスターウルフの巣と思われる洞窟の調査に入ったルークであったが、すぐに戻ってきた。
ルーク「二人ともちょっと来てくれる?」
ポーリン「どうしたの? 魔物は死んでたの?」
ルーク「うん、死んでる、ただ……」
ポーリン「?」
ルークに案内され洞窟の中に入ったリスティ・ポーリンは洞窟の最奥部に倒れていた魔物を確認したが、その姿を見てポーリンは絶句した。どうやらディザスターウルフは子育て中だったようなのだ。母狼の遺体に、乳を求めた赤子の狼が吸い付いたまま、一緒に果てていたのだ……
ルーク「……リスティ、ディザスターウルフで間違いないと思うけど、どう?」
リスティ「ああ、間違いないね」
ポーリン「傷つきながらも、子供達のところに必死で戻って、乳をやりながら息絶えたのね……」
ポーリンはボロボロ涙を流しながら言った。
その時、リスティが何かに気付いた。死んでいると思っていた狼の赤ん坊が動いた気がしたのだ。
慌てて確認するルークとリスティ。すると、一匹だけ、かすかにまだ息がある子狼が居たのだ……
ルーク「ええっと、これ、やっぱり殺したほうがいいのかな?」
リスティ「……人間的には、そうなるのかな? 子供でも災害級の魔物だからね。もし生き延びて大きくなったら、人間の街の驚異になるかも知れないからね」
ポーリン「そんなっ! そんな冷たいこと二人が言うと思わなかった! まだ赤ちゃんじゃない! 助けてあげて、早くしないと死んじゃう!」
リスティ「大丈夫、既にルークがヒールを掛けてる。言ったろう、人間なら、って」
リスティが微笑みながら言った。
ルーク「森で生きる動物や魔物から見れば、人間の街のほうが異物なんだろうと思うよ、きっと。どちらが正しいなんて事はないよね」
ルークのヒールで子狼は一命をとりとめたものの、長く乳をもらっておらず、体力が落ちてしまっていた。何か食べさせないと、いずれ衰弱して死んでしまうだろう。
ルーク「ミルクをあげないといけないけど……ポーリン、出ないよね?」
ポーリン「出るカーイ!」
ルーク「ちょっと抱いてて」
ルークはポーリンに孤狼を渡し、バッグの中にある食材を色々出して、すり潰して流動食を作り始める。リスティは母狼の亡骸を解体に入った。危険度災害級の魔物である。自分たちで討伐したわけではないが、貴重な素材である、捨てていくにはもったいない。
ルーク「さ、できた。これをあげて」
ルークは布の袋に流動食を入れて、端にごく小さな穴を開けてポーリンに渡してやった。孤狼は意識を取り戻し、必死でポーリンの胸に服の上から吸い付いていた。
ルーク「疲れた。死ぬほど細かくしたから喉に詰まる事は無いと思う。リスティを手伝ってくるね」
ポーリンが布袋を口にあてがうと、子狼はすぐに吸い付いて飲み始める。
あっという間に流動食を吸い尽くした孤狼は、満腹になり、そのまま眠ってしまった。
ポーリン「かわいい……」
・
・
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ポーリン「ね、この子、どうするの?」
ルーク「置いていくわけにはいかないよねぇ……」
ポーリン「無理よ、こんな幼い子犬が、森の中に放置されたら死んでしまうわ」
ルーク「じゃぁ連れて行って育てる?」
ポーリン「そうしましょう!」
リスティ「子供とはいえ、一応、災害級の魔物なんだけどね」
ルーク「一人で生きていけるくらい大きくなったら森に返せば?」
ポーリン「え、返しちゃうの? そのまま従魔に登録して飼いましょうよ」
ルーク「従魔登録? そんな事できるの?」
リスティ「本当は、キチンとテイムしないといけないんだけど、子供の頃から育ててればまぁ、狼は群れで生きる習性があるはずだから、大丈夫じゃないかな?」
ポーリン「そうしましょう、そうしましょう!」
子狼を抱きしめて離さないポーリンなのであった。
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