第60話 一人前の冒険者?

狩りの成果はまずまずであった。リスティの気配察知能力は離れた場所の獲物も見逃さないし、弓は正確である。


ルークもリスティにはやや劣るが優れた気配察知能力を持っているし、切れ味抜群の剣技もある。さらには、たとえ強敵が現れてもルークが【クリーン】を使って相手の血液を蒸発させてしまうので、戦いにすらならないのだから。


斃した獲物は、そのまま森の中で捌いて、干し肉を作ってしまう。ルークのクリーンがあれば短時間に簡単に干し肉が作れてしまうのだ。


ポーリン「はぁ、ほんとに便利ねぇ、ルークの魔法」


ついでに火を焚き、できた干し肉を使って燻製も作った。


森の中で焚き火などしていると、時折獣や魔物が寄ってきたりもするが、ルークとリスティにとっては新たな食材でしかないのであった。


ポーリン「なんか、森が危険だって感覚がなくなるわね……」


ルーク「別に森は危険じゃないよ」


リスティ「いや、森は危険だよ。調和している限りは恵みを与えてくれるけどね。調子に乗って森に敵対すれば、飲み込まれる事もある。注意する事だ」


ポーリン「なるほどね、やっぱり甘くはないわよね……」


ルーク「ん、注意するよ、リスティ」


完成した食材をマジックバッグに収納し、街に戻るルーク達。だが、街に入る時に、案の定、少々揉める事になってしまった。(出る時は無料である。)


衛兵「なんだ? この汚ねぇ落書きは? 何が書いてあるのか読めねぇぞ?」


ルーク「だよねぇ……(笑) 一応、冒険者ギルドのマスター、キリングさんが書いてくれた証明書なんだけどね」


衛兵「こんなの、何の意味もないな。規則通り入城料払って入るがいい」


ポーリン「ちょっと! 堅いこと言い過ぎじゃないの? ルークは間違いなく冒険者試験に合格して冒険者になったのよ? ギルドマスターのキリングに問い合わせてくれれば分かる事でしょう?」


衛兵「いちいちそんな事してられるか! 俺は規則通りやるだけだ!」


まぁ、入城料などそれほど高い金額でもない。金を払ってしまおうとしたルークだったが、その時、別の衛兵がやってきて、無料で通して良いと許可を出してくれた。


衛兵「隊長、いいんですか?」


後から来た衛兵は隊長だったらしい。


隊長「ああ、キリングからはちゃんと連絡を貰ってる。ああ、ひと目見れば分かる、そのクセ字は間違いなくキリングの字だ。俺は昔、キリングと一緒に冒険者をやってたんだ、だから間違いない。


悪かったな、足止めしちまって。コイツは仕事をまっとうしただけんだ、悪く思わんでくれ」


ルーク「大丈夫、仕事だもんね、仕方ないよ」






   * * * * *






冒険者ギルドに戻ると、思ったより早く本部から承認が降りたそうで、メアがギルドカードを渡してくれた。


ルーク「これがギルドカード……」


ポーリン「Bランクだからシルバーね。アタシと同じ」


ポーリンも自分のカードを出して見せる。


ポーリン「Aランクだと金色になるのよ」


ルーク「ああ、さっきリスティが出してたカードはゴールドだったね」


ポーリン「これで、ルークも一人前の冒険者ね!」



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