第50話 な~るほど! ってなるカーイ!

結局、ギルマスとルーク、ポーリン、リスティ、メア、さらに暇な冒険者達でゾロゾロと森に来る事になったのであった。


自分とルークだけで行くと言い張ったキリングだったが、森は魔物が出没して危険だと言うことで、初心者であるルークを守るため、冒険者たちがボランティアで協力してくれると言われては断りきれなかったのであった。


ルーク「暇な冒険者が多いんだね、大丈夫、この街の冒険者ギルド?」


ポーリン「ちょっと不安になるわね……」


メア「初心者のルークのために協力してくれる冒険者が多いなんて、良いギルドでしょう?」


実は、暇な冒険者たちはポーリンより強いと言われたルークの実力が気になっていたのもあるのだが、誰に言い寄られても靡かなかったポーリンがどうやらルークに入れ込んでいるらしいのが気にいらないのだ。ポーリンに相手にされなかった冒険者の男たちは(中には女も)、ルークがギルマスにやられてしまえばいいと思っていて、それを見に来ているのであった。


リスティ「あそこにゴブリンが居るねぇ」


キリング「さすがエルフ、目がいいな」


リスティ「目というより鼻だけどね」


ルーク「ゴブリンは臭いからねぇ…」


冒険者A「五体だな」


キリング「ゴブリンか、初心者の試験にはちょうど良い。すこし数が多いが大丈夫か?」


ルーク「え、もう終わりましたけど?」


キリング「え?」


見ると、五体のゴブリンは跡形もなく消えていた。冒険者達も困惑した顔をしている。


そこに確かに居たはずのゴブリンが蒸発するように消えてしまったのである。


ルーク「ゴブリンって干し肉にしても不味いし、変な臭いがして不潔だし、汚れものと同じカテゴリーなんだよね……」


キリング「……あーどういうことか説明してくれるかね?」


ルーク「いや、だから、【クリーン】は汚れ物を浄化して消してしまうわけでしょ?」


キリング「フム?」


ルーク「最近、ゴブリンは汚れ物にしか思えなくて、【クリーン】使うと綺麗サッパリ浄化されて消えてしまうようになったんだよねぇ……」


キリング「な~るほど!


ってなるカーイ!!」


    ・

    ・

    ・


冒険者達も信じられず、何かトリック使ったんじゃないのか? という声もあり、別の魔物を探す事になったのだ。


しかし、次に発見されたのもゴブリン六匹であった。雑魚モンスターではあるが、ゴブリンは見つけたら駆除しておくのが冒険者のルールである。


キリング「ルーク、試しに【クリーン】を使わずに倒して見せてくれないか?」


ルーク「ゴブリンは臭いから嫌なんですよねぇ、離れたところからでもいいですか?」


キリング「魔法を使わずに、離れたところから仕留められるのか?」


ルーク「これを使います」


ルークは魔法収納マジックポーチから小さな弓矢を取り出した。小型だが強力な、リスティと一緒に作ったお手製の弓である。


キリング「弓も使えるのか!」


ルーク「リスティに教わったんだ」


キリング「そうか、エルフと言えば弓というイメージがあるな」


そう言ってる間にも、ルークは次々と矢を放っていた。


ゴブリンは人間を見つけて襲おうと近づいてきていたが、その途中で全て射抜かれて倒れた。


冒険者達がゴブリンの死体から魔石と討伐証明の耳を切り取って渡してくれた。後でギルドに提出すれば討伐の実績になるそうだ。それはありがたいのだが、解体してくれた冒険者達の身体は当然、ゴブリンの血で汚れて、嫌な臭いがしている。


ルーク「綺麗にしちゃうね」


ルークは【クリーン】を使って汚れた冒険者達の身体を綺麗にしてやった。ついでに残ったゴブリンの死骸も流れた血液も【クリーン】で消し去ってしまう。


冒険者A「ほう、これは、便利なもんだなぁ!」


ポーリン「そうでしょ! ルークと一緒なら冒険も快適なのよね!」


メア「これほどとは……正直驚きました、すごいです。弓の腕と【クリーン】だけで、冒険者としては十分ですね。支援職として活躍できると思います」


ポーリン「ルークは【ヒール】も使えるわよ」


キリング「ほう! それじゃぁ支援職としては申し分ないじゃないか、試験は合格って事でいいな。


せっかく来たんだからゴブリン以外の魔物を倒すところも見たかったけどなぁ」


ルーク「あ! お肉発見~」


言ってる傍からモンスターボアがルーク達の様子を伺っているのが見えたのであった。


ルークが駆け出す。


慌ててキリングも追いかける。


魔猪は自分に向かってくるルークに腹を立てたのか、地面を一~二度掘る動作のあと、ルーク達に向かってまっしぐらに突進してきた。


逃げずに真正面で待ち受けるルーク。


激突すると思われた瞬間、ゆらりと揺れたルークは猪の脇に移動し突進を躱すと、腰の鬼斬丸を振り抜いた。


鞘から打ち出された刀は猪の足を切断、猪はそのまま転倒し、十数メートル転がって止まった。


ルーク「あ、いけね、剣でやっちゃった。魔法でやるんだったのに……」


血振りし納刀しながらルークが舌を出した。


ルーク「まぁ、魔法はこれから使うからいいよね?」


足を斬られたのでもう走れないが、まだ猪は生きている。その猪に近づき【ドライ】を発動するルーク。


猪の身体から血の成分と水分が消え去り、猪が絶命する。一瞬にして干し肉化した魔猪肉のできあがりである。


ルーク「完全に水分を飛ばしてミイラにしてしまう事もできるんだけど、そうすると食べられなくなっちゃうからね。燃料にする時はいいんだけど。美味しい干し肉にするには、適度に水分を残しておくのがコツだよ。【クリーン】で肉を腐らせる微生物も除去してしまうから、腐らないんだ」


キリング「燃料に……それって、戦闘中にも使えるのか?」


ルーク「使えますよ?」


キリング「それ、もし、人間相手に使ったら……」


ルーク「やった事ないから分からないけど、多分…」


メア「多分、死んじゃいますね……」


ルーク「人間相手には、どうなるか、実際に試した事はないんですけどね。殺していい人間と戦う状況というのが滅多にないんで~」


メア「そりゃそうね……」


ルーク「爺ちゃんも、無駄に恨みを買うから人は殺すなって言ってたしね」


キリング「そりゃそうだな……」


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