第43話 部屋がみつからない

ルーク「街に住んだ事はあるよ、六歳くらいまで孤児院に居たんだ」


店主「六歳まで? じゃぁ、ほとんど院から出たことないのでは? その後は? ずっと森に住んでいた? 一人で? ああ、お爺さんとね。その間、ご近所付き合いは? まったくなし? うーん、本当に大丈夫かい? 狭い街だからね、ご近所トラブルとか困るんだよね?」


リスティ「私は昔、街に住んでいた事があるよ?」


店主「そうは言っても、エルフというのは、それはそれでねぇ。この街では珍しいから何かと目立つだろうし、それだけの美形かおだと……何かトラブルが起きないといいんですけどねぇ…」


そこにポーリンが駆け込んで来た。


ポーリン「ちょっと! 私を置いて行かないでよ! 一緒に行くって昨日言ったでしょ!」


実は、ポーリンは久々の実家の自分のベッドで寝て、寝坊してしまったのだ。ポーリンを起こしては可哀想と思ったルークとリスティは、ポーリンの両親に不動産屋の場所を聞き、二人だけで来たのである。


店主「おや、これはブラハリ商会のお嬢様じゃないですか。今日は何か御用で?」


ポーリン「御用で? じゃないわよ、この二人はうちの客人よ! ルーク、父が書いてくれた紹介状があるでしょ、その様子じゃ、見せてないのね?」


ルーク「ああ、これ?」


ルークから紹介状を受け取った店主は少し顔色が変わった。


店主「ブラハリ商会の大事なお客様でしたか、これは大変失礼致しました」


ポーリン「何? 何か失礼なことを?」


ルーク「いや、大丈夫。僕が街に慣れていないから心配してくれていたんだよ」


店主「そ、そうなんですよ!」


ポーリン「アタシがついてるんだから、何も問題ないわ。何かあってもブラハリ商会が責任を持ちます」


店主「いやいやいや、問題なんてないです、あっても私がなんとかいたしましょう! ブラハリ商会にはいつもお世話になっておりますからな! お二人で住む部屋をお探しと言う事で」


ポーリン「三人よ!」


ルーク「え?」


ポーリン「三人でしょ。ルークと、リスティと…」


ルーク「と?」


ポーリン「わ・た・し!」


ルーク「あれ? リスティが一緒に住むのは分かるけど、ポーリンも一緒に住むの? ポーリンは実家に住むんじゃないの?」


ポーリン「こっ、ここまで一緒に森の家で住んでたのに、今更それはないでしょっ! 私は冒険者になった時に家を出て独立したの! また実家に戻る気はないわ! それに、まだ剣術で教わりたい事だってあるし、ルークだってまだ街に慣れてないから不安でしょ?! 私が一緒に居てあげるから大丈夫よ!」


ルーク「そっ、いや、まぁ、いいんだけどね……」






とりあえず、空いている物件を調べてもらうルーク。希望は、アパートや下宿の形式ではなく、どこかの一軒家を借りる事であった。できれば庭と倉庫スペースがあるとありがたい。それは、干物の製作と貯蔵をしておくためである。


ルークは【クリーン】と【ドライ】を使って干物を作ってしまうので、それほどの広さは必要ないのであるが、燻製だけは煙が出るので、周囲にあまり煙の影響がない場所が必要だったのである。


店主「うん? 煙を出しても大丈夫な場所などというのは、街の中にはないですぞ……?」


ポーリン「ないの?」


店主「ないですなぁ……もう街はいっぱいいっぱいです、家がひしめき建っておる状況で、当然空き地などないですし。外壁を拡張する工事もなかなか進まない状況ですからなぁ……」


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