第40話 「こっちよ捕まえてみて!」「ははは待てよ~」「リア充かよっ」

アマリア「ルーク・レインフォレス……いいわね」


バッケン「レインフォレス流か」


ルーク「いや、僕は流派を名乗る気はないよ。僕は剣士として生きる気はない。爺ちゃんからもずっとそう言い聞かされてたしね、剣の道を行くなって」


リスティ「フィルはルークに流派名も技の名前すらも教えてなかったしね。フィルは、剣の腕は天才だったけど、そのせいで翻弄された人生だったから……自分のようになってほしくないんだと思うよ」


バッケン「師匠は、ルークは自分を超える天才だと言っていたのに、もったいない。だが……


…分かる気もする。俺も、剣の道に生きていなかったら、どんな人生だっただろうかと思うことがないわけではない。


それに、ルークの技が奔放なのは、制約のない自由な生き方が現れているのだろう。


俺は、愚直に教わったことを反復練習する事しかできない人間だったからな…。自分で工夫して変えたり新しい技を作り出すような柔軟性がなかった」


ポーリン「私と戦った時は、随分柔軟な戦い方・・・・・・・・をしてたように思うけど?」


バッケン「あれは、戦場で否応なく適応せざるをえなかっただけだ。流派の技など関係ない、生き残るための手段だと開き直れたしな。だが、師匠の道場では、柔軟性がないといつも怒られていた。


考えてみれば、師匠も考え方が柔らかい、剣聖などと言われていながらも冗談好きなユーモアがある人だったなぁ……」


リスティ「ルークは街のルールにも縛られず、森で育った自由人だ。ルークの人生はきっと、剣の道なんかに収まらない自由奔放なものになる。フィルはそう言ってたし、そうなる事を望んでいたんだよ」




   * * * * *




それからしばらくの間、ルークとポーリンとリスティ、そして何故かバッケンも、森の家に逗まり、ポーリンの修行の日々が始まった。


修行というか、ルークはポーリンと力の限り遊んでいただけなのだが……。


朝起きると庭で、ルークとポーリン二人並んでダンスが始まる。ダンスではなく、足捌きの練習なのだが。


ウォーミングアップで決まった「型」を行っているだけだが、フットワークを中心として縦横無尽変幻自在に動き回るその動きは、知らない人が見たら妙なダンスを踊っているようにも見えるだろう。


たまにバッケンも参加したが、いかつい印象のオッサンがこの動きについてこられるのが意外に感じるポーリンであった。


バッケン「レインクラッド流の基礎訓練でも似たような事をやるからな。少し違ってるが、この程度の動きならついていけるさ」


さらに、訓練は、庭に埋め込まれた石や器具上での鬼ごっこ、森の中での鬼ごっこなどを繰り返すものであった。最初は慣れなかったポーリンであったが、さすがフィルの娘である、すぐに動きについていけるようになった。


毎日、ルークとポーリンは二人で飽きることなく楽しそうに森の中を走り回った。


……二人ではなく、バッケンも居たのだが。


バッケン「待て…はぁはぁ……、化け物かオマエラ……。俺も歳か…」


基礎の動きはついていけたバッケンも、さすがに森の中を走り続けるのは、年齢的に少々しんどいようだった。


ポーリン「中年オジサンは無理しないで休んでればいいのに」


バッケン「はぁはぁ…そうも言ってはおれんさ、俺にはやらねばならない事が……はぁはぁ……もっと、鍛え直さんとな……」



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