第38話 「流派を継「嫌でーす」」

シスター・アマリア「…で、この後ルークはどうするの? このまま、この森の中に住み続けるつもり?」


ルーク「いや、爺ちゃんが、お前は街に出てもっと人と関われって言ってたから。そして、いつか旅もしてみろって、世界を見てこいって。何にでも挑戦して、いろいろな経験をしたらいいって。人生を楽しめって爺ちゃんは言ってた」


リスティ「フィルの遺言なら守らないとね」


ポーリン「じゃぁ街に住むのね? ラハールの街よね? じゃぁ一緒に冒険者をしましょうよ! 旅に出るなら冒険者のほうが都合がいいわよ」


ルーク「いや、今のところは冒険者とかは考えてないよ。干し肉買ってくれる人がたくさんいるしね。先の事は、とりあえず街での生活が落ち着いてから考えるよ」


ポーリン「そ、そう……」


アマリア「何か困ったことがあったらいつでも言ってきなさい、私も、神父様もいつでも力になるから」


バッケン「俺もまだしばらくは街にいるつもりだ。そのうち国に帰るつもりだがな」


リスティ「ふふふ、じゃぁ僕も街に行ってルークと一緒に住もうかな」


「「「「「えっ!?」」」」」


リスティ「フィルに、ルークとポーリンを頼むって言われたからさ。実は僕は、冒険者でもあるんだよ?」


そう言うと、リスティは金色のギルドカードを取り出して見せた。


ポーリン「Aランク!」


アマリア「すごい……というか、ランクも凄いけど、それ以上にエルフが街に住むなんて、ちょっとした騒ぎになるわよ」


ポーリン「これは、女の子達が放ってはおかないわね……女だけじゃなく男も放っておかないかも?」


リスティ「ルークがもし冒険者をやりたいなら、パーティを組もう。僕はルークの保護者みたいなものだからね」


ポーリン「え! だったらアタシも! そのパーティに入れて!」


アマリア「いいわねぇ、私も参加しようかしら」


ポーリン「アマリアは冒険者辞めてシスターに戻ったらいいじゃない」


アマリア「何言ってるの? 私は今でもシスターですよ?」


ポーリン「バリバリのベテラン冒険者として他の冒険者達にアネさんと呼ばれ、魔物とか殺しまくってるくせに。生臭シスター……」


アマリア「私はちゃんと殺した後、その魂が天国へ行けるように祈っていますから。祈らない冒険者達のほうが罪深いのでは?」


ポーリン「それは……なんかずるい」


バッケン「ポーリン、お前は師匠の、剣聖フィルモア・レインクラッドの娘、エリカ・レインクラッドなのだ。それを忘れるな。レインクラッドの名に恥じぬよう、レインクラッド流の剣術を徹底的に叩き込んでやる、今日からお前は俺の弟子だ!」


ポーリン「だがお断りします!」


バッケン「なんだと?! お前が継がなかったら誰がレインクラッド流を継ぐんだ?」


ポーリン「ちちは継げなんて言わなかったわ。むしろ危険だからその名は忘れろって。


ちちには悪いけど、私はエリカ・レインクラッドじゃない、ブラハリ商会の娘、ポーリン・ブラハリよ。いつか商才のある男を捕まえて義父パパの商会を継がせるの。冒険者になるの反対されたけど、跡取り捕まえてくるからって許してもらったんだから。それにもう、候補は一人みつけたしね」


バッケン「し、商人になるだとぉ? それじゃぁレインクラッド流の技は廃れてしまうじゃないか?」


ポーリン「そんなの知らないわよ。ちちも、名乗りたいなら自分独自の剣を磨いて独自の流派を名乗りなさいって言ってたし。そうだ! そんなに流派を残したいなら、レインクラッド流はバッケンが名乗りなさいよ、私が許可するわ!」


バッケン「俺が……?」


ポーリン「父に聞いたわ、あなた、最強の弟子だったんでしょ?」


バッケン「俺は…俺には仇討ちが……


…だが、そうだな、レインクラッド流は戦争でたくさんの人間を殺してきた。恨みも買っているだろう。血塗られたレインクラッドの名を継げば、確かに危険を呼び寄せる可能性はある。俺も、これからレインクラッドの名の元に、“奴” を殺すつもりだしな。ポーリンは名を継がないほうがいいかも知れん……」


ポーリン「仇討ちなんて……止められないの?」


バッケン「師匠の、お前の父のためでもある。お前の母の仇でもあるのだぞ? だが分かった、流派は継がなくていい、そっちは俺がなんとか考える。だがそれでも、お前にはレインクラッド流の技を伝えておきたい。師匠の形見だと思って」


ポーリン「嫌よ」


バッケン「何~?!?! これほど言ってもか、なんでだ~?!」



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