第35話 バッケンとフィル再会
バッケンとのいざこざがあった後、森の家に戻ったルークは、フィル爺にバッケンの事を話した。
バッケンの名前を聞いたフィル爺は目を細め、バッケンをこの家に連れてきてくれるようルークに頼んだのだった。
ルーク「なぁ爺ちゃん、爺ちゃんは人を殺したのか?」
フィル「…ああ。儂は昔、たくさんの人の命を奪ったよ……戦争でな。
だが、ルークよ、人の命だけが尊いわけではない、むしろ人間種の命はそれほど価値が有るものでもないかも知れんぞ?
ルーク、お前も随分たくさん、森の動物や魔物達の命を奪ったろう? それらの命が、人間より軽いなどとは思わぬほうがいい。
ああいや、罪悪感を感じる必要もないがな。
生き物はすべて、食べるために殺し合い、食い合うのだ。食べるために殺すのなら仕方がないのだ。殺されそうになって必死で抗う事も、な。
だが、人間だけは、食べるためでも身を守るためでもなく、楽しみのために殺したりする。あるいは私利私欲のため、あるいはくだらない見栄のため、などでな…。
同じ種族同士、人間同士で殺し合う。人間というのは業が深い、罪深い種なのかもしれん」
ルーク 「……爺ちゃんは、バッケンの家族を、奥さんと子供を……殺したの?」
フィル 「いや、儂は殺してはおらぬ。殺したのは別の奴じゃよ……儂は濡れ衣を着せられたのじゃ」
* * * * *
ルークに案内されて森の家に来たバッケン。ポーリンも一緒である。
来る途中、魔物に襲われたが、バッケンが手を出すまでもなくルークに【ドライ】で瞬殺され、干し肉になっていく。
バッケン「お前……その魔法使ってたら、俺なんか一瞬で
ルーク「だから言ったじゃないか。魔法を使えば殺してしまうって。最近は【クリーン】でも殺せるようになったよ」
バッケン「【クリーン】って、浄化のクリーンだよな? 汚れを綺麗にする……?」
ルーク「そうだよ、指定した汚れを消してしまう魔法。最近、汚れ以外のものも指定できるようになったんだ……」
バッケン「おい、それって……」
ルーク「これ以上は秘密~」(笑)
そもそもバッケンはルークの【ドライ】を止血のためだが身を以て体験している。あれを体内の血液にむけて使われたら……?
やり過ぎて、ルークが本気でキレて、魔法を使って自分を殺しに来ていたらと思うと、ゾッとするバッケンであった。
* * * * *
フィルはベッドではなくリビングの椅子に座ってバッケンを待っていた。二人の鋭い視線が交錯する。
二人だけで話をさせてくれというフィル。
バッケンがフィルを殺すのではないかとルークは心配したが、フィルが大丈夫だと言うので渋々部屋を出た。
フィル「バッケン……久しいの。元気であったか?」
バッケン「師匠……まさか再び生きて師匠に会えるとは思ってませんでした。森に居る人物は、おそらく同門の誰かであろうとは思っていましたが……」
フィル「同門? ああ、ルークの剣術が荒削りだったからか? あやつには、対人向けの剣術を教えてはおらんからな。だが、強かろう? おそらく、儂の弟子の中でも、最も飛び抜けた才能を持っている」
バッケン「……確かに、私も敵いませんでしたからな」
フィル「レインクラッド流最強の弟子と言われたレオグランドを負かすとは、なかなか大したもんじゃろう?」
バッケン「……知らない技を使っていました。新しい技を開発されたのですね?」
フィル「儂の技ではない。あの子が自分で工夫して編み出したのじゃ。あの子は、儂などとうに超えておる。そんな事より、訊きたい事があるのだろう?」
バッケン「はい。師匠……私の、私の妻と娘を殺したのは師匠ですか?」
フィル「そうとも言えるし違うとも言える」
バッケン「?! 回りくどい言い方はやめてくれ! はっきり答えてくれ、どうなんだ?! もし、犯人が師匠なら……! 例え師匠と言えども…!」
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