第30話 小娘のお遊び剣術など

バッケン「気をつけろ、何か企んでいるぞ!?」


ルーク「企んでなんか居ないよ、ただ、僕は森に帰るだけさ」


ルークは森に向かって駆け出した。だが当然、ルークが森に逃げ込むのを読んでいた冒険者達がそれを塞ぐように立っている。つまりルークはその冒険者達に向かって走っている事になるのだが……


一番手前に居た冒険者が腰を低くしてルークを捕まえようとしている。どうやら武器を使う気はなく、素手で捕まえるつもりらしい。その男はルークが横に逃げようとしてもタックルで捕まえる気のようであった。だが、次の瞬間、なぜかその冒険者はルークの居ない、何もない場所に向かって飛び込んでいった。


他の冒険者も慌ててルークの前を塞ごうとするが、次々と脇に飛んでは道を開けてしまう。


結局、そのままルークはまっすぐ走りぬけ、森に逃げ込んでしまった。


冒険者A「おいお前ら! 何やってんだ!」


冒険者B「いや、あいつ、突然横に逃げようとしやがったから、先回りしてそれを塞いでやろうと…」


冒険者C「何言ってんだ? あのガキはまっすぐ走り抜けていっただけだぞ?」


冒険者A「どうやらフェイントに引っかかったようだな……なるほど、確かに逃げ足が速いな!」


バッケン「今のは “ファントム・フリック” だった。レインクラッド流の極意技のひとつを何故あんな少年が? やはり……どうやら俺は目的地に近づいているようだな」


その後、せっかく冒険者達を大勢雇ったので、そのまま森の中の少年の家を捜索したのだが、結局見つからず解散となったのであった。






冒険者A「またやんのかよ、しつこいねぇ、オジサン・・・・


バッケン「うるさい、俺はどうしてもやらねばならんのだ」


冒険者B「だけど、本当に来るかね?」


バッケン「来るさ」


また、街道でルークを待つバッケンと雇われ冒険者達。そこにルークがやってくる。いつものように森に帰る途中である。


ルーク「またぁ……?」


バッケン「言ったろ、逃しはせんと」


ルーク「鬼ごっこなら負けないって僕も言ったよね?」


バッケン「ふん、お前は逃げないさ」


ルーク「?」


『冒険者っていうのは、いつから人攫いの依頼を受けるようになったの?!』


ルーク「ポーリン!」


冒険者B「ホントに来た……」


ポーリン「メアから聞いたのよ、バッケンが妙な動きをしてるって」


バッケン「俺が待っていたのはお前だよ、ポーリン」


ルーク・ポーリン「?!」


バッケンはポーリンを釣るためにわざと、ルークを襲う計画についてメアの近くで話し聞かせたのだ。


バッケン「ポーリン、お前、ルークの家の場所を知ってるそうじゃないか?」


ポーリン「それが目的だったの?! 教えるわけないでしょ!


……力づくで聞き出そうってわけ?」


取り囲む冒険者がいやらしい顔をしている。


バッケン「どうだルーク、お前が素直に話してくれればポーリンには手出しはしないぞ?」


ポーリン「卑怯者! ダメよルーク! 私は大丈夫、こんな連中には負けないわ」


冒険者達「おい、俺達は~」


バッケン「安心しろ、戦るのは俺一人だ。この連中は逃げ道を塞いでくれるよう頼んだだけだ」


ポーリン「戦るって、私と? これでもこの街の冒険者の中では剣の腕はナンバーワンだって言われてるのよ? 私に勝てると?!」(※ナンバーワンだとは言われていない、ポーリンの強がりである。トップクラスの冒険者達に名を連ねる実力があるだろうとは言われている。)


バッケン「ふん、思い上がるな。小娘冒険者の “お遊び剣術” など、戦争で培われた騎士の剣術の相手になどならん。素直に降参したほうが身のためだぞ」


ルーク「あの~」


ポーリン「受けて立つわ!」


ルーク「いや、あの~」


ポーリン「ルークは黙ってて! 私だって剣の腕にはそれなりに誇りを持ってるのよ。元騎士だか知らないけどお遊びだなんて馬鹿にされて引き下がれないわ! 抜きなさい!」


剣を抜き構えたポーリン。


不敵な笑みを浮かべながらゆっくり剣を抜き、構えたバッケン。


殺気がぶつかり合う。



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