第25話 しつこいなぁオジサンも

バッケン「ふん、もう守ってくれる女どもは居ないぞ? 答えてもらおうか、お前のその剣はどこで手に入れたのだ?」


ルーク「だから、言えないんだってば」


バッケン「盗んだのか? それでもいい、どこから盗んだのか教えろ」


ルーク「失礼だな、盗んだりしてない、譲り受けたんだよ。って、どこから盗んだかを知りたいって事は、剣が欲しいわけではないって事……? 元の持ち主の事を知りたいとか?」


バッケン「ああ、はっきり言えばそういうことだ」


ルーク「その、この剣の元の持ち主と、オジサンはどういう関係なのさ?」


バッケン「俺はずっと……捜してるんだ……」


ルーク「何を?」


バッケン「俺の妻と娘を殺した奴をだ!」


ルーク「それは……お気の毒に」


バッケン「上っ面でも同情するならその剣の持ち主について教えてくれ」


ルーク「…で、でも、この剣の持ち主がその犯人とは限らないのでは? 剣は、剣だけ、関係ない人の手に渡っていったのかも知れないじゃない?」


バッケン「そういう事もあるだろう、会ってみれば分かる事だ。だから教えてくれないか?」


ルーク「うーん……この剣の、元の持ち主……? それは……」


バッケン「それは…?」


ルーク「ごめん、やっぱ言えない」


バッケン(ガクッ)「……なぁ、少年よ、ルークとか言ったか? できれば俺も手荒な事はしたくない、素直に話してくれないか?」


そう言いながら、バッケンは剣の柄に手を掛けた。


ルーク「話せないよ、約束なんだ」


バッケン「止むを得ん……力づくで話してもらうしかないか」


バッケンは剣を抜いた。


ルーク「困ったね…」


バッケン「素直に話せば何も困る事はないさ」


ルークも斜に構え、腰の剣に手をあてがい鯉口を切った。


バッケン「やめておけ……立派な剣を持って強くなったような気になっているのだろうが、俺には勝てん」


ルーク「僕は、剣は得意じゃないから、できたらやめたいんだけどねぇ。でも、魔法を使うと貴方を殺してしまうから」


バッケン「何? お前は魔法のほうが得意なのか?」


バッケンの表情に警戒の色が浮かぶ。


ルーク「うん、僕が得意なのは【クリーン】と【ドライ】だよ」


バッケン「何だと……馬鹿にしているのか? 生活魔法で俺が倒せると思ってるのか?」


ルーク「うん、多分できるよ、魔物は殺せるからね。人間相手には試した事ないんだけどね。でも、さすがに人殺しちゃまずいだろうから……


とはいえ、剣を向けて脅されたら、こちらもなんらかの方法で対抗せざるを得ない。目には目を、剣には剣を、ってね。


オジサン…どうしても、引いてくれる気はない?」


バッケン「剣が苦手な者がどうしてその剣を持っているのだ? お前こそ素直に話せば怪我をせずに済むぞ?」


ルーク「……」


バッケン「仕方ない、ならば、腕の一本くらいは覚悟してもらおうか」


バッケンが八相に構えた。


バッケン「…どうした? 抜かないのか?」


ルークは鬼斬丸の柄に手を掛け、鯉口は切っているがしかし剣は抜かず、斜に構えて腰を少し落としたまま動かない。


バッケン「……どうやらその剣の使い方は知っているようだな。ならば侮れん。レインクラッド流剣術の神速の打ち込みで対応させてもらおう。はたして、“居合” の真似事で対処できるかな?」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る