第22話 視線が痛いな

ポーリンとしては納得できない気持ちはあるものの、これ以上はどうしようもない。


ただ、殺されかけたのだ。証拠はないとは言え、自分の中ではそれは確信がある。もはやジャックを仲間とは思えない。


他のメンバーは、ジャックに振り回され騙されてきただけなのではあるが、ジャックのイエスマンばかりなのだ。


もうこのパーティを、仲間として信頼はできない。


背中を任せられない、信じられない者達と一緒に戦う事などできはしない。


ポーリンはパーティ脱退の意志を示し、ギルドがそれを認めた。





若く美人で実力もあるポーリンである。冒険者の間で人気は高く、フリーになったと聞いて、即座に色々なパーティが仲間に引き入れようと動き出す。


……動き出そうとしたわけだが。


そのポーリンが見慣れない男と一緒に居る……。


今までどんな男が誘っても相手にしなかったポーリンが親しげに話している、あの少年は誰なのかとルークに注目が集まるのであった。


ルーク 「気のせいかな、なんか視線が痛いんだけど……今までほとんど人が居ない森の中で暮らしてたから、こんなにたくさん視線があるとなんか居心地悪いなぁ」


ポーリン 「悪かったわね、くだらない事に付き合わせてしまって」


ルーク 「うん。ほとんど僕には関係なかったねぇ」


ポーリン 「ごめん……」


ルーク 「まぁ問題ないけどね。初めてギルドのマスターの部屋とか入って面白かったよ。あの人、犬みたいな顔してたね~」


ポーリン 「ルークは獣人族見るのは初めて?」


ルーク 「うん、人間以外の種族で会った事があるのはリスティだけだから」


ポーリン 「エルフのほうが珍しさははるかに上なんだけどね……」


ルーク 「じゃぁ、魔物を出しちゃおうか。直接買い取りカウンターでいいよね?」


ポーリン 「そうね、さっさと処理してしまいましょう」





素材買い取りカウンターで、道中倒した魔物の死体を収納から出していくルーク。


魔物はゴブリン六体(これは討伐証明の耳だけ)、オーク四体、モンスターボア一体、一角兎四体。


買取親父 「おお、結構多いな。容量大きめのマジックバッグを持ってるんだな。ちょっと待ってろ、今査定してやる」


すぐに買取親父は査定を出してくれた。


買取親父 「金貨四枚だ、じゃぁ、いつもの通り口座に振り込んでおくよ」


ポーリン 「あ、今日は現金でもらえる?」


買取親父 「ん? どうした?」


ポーリン 「全額ルークに渡すから。はい、金貨四枚、どうぞ」


ルーク 「え? いらないよ、全部、倒したのはポーリンじゃないか」


ポーリン 「いいえ、あなたも手伝ってくれたじゃない、【クリーン】使ったり、水をくれたり、運んでくれたり」


ルーク 「魔物の素材は、倒した人間に権利があるんだろう? 僕は手伝っただけなんだから、運んだ手間賃にしては多すぎでしょ」


ポーリン 「何言ってるの? 荷物運びだって立派な仕事よ? 当然の権利だわ。私一人では運べなかったんだから、収入はゼロでもおかしくなかったのよ? それに、助けてもらったお礼もまだしていないし」


ルーク 「一晩泊めたお礼にしたって多すぎるでしょ、どんな高級宿なのさ」(笑)


ポーリン 「私は命を助けられたのよ? こんなものではお礼にはならないくらいよ!」


受け取っていや受け取れないそんな事いわないでいやでもやっぱりなどと言い合っているルークとポーリンを、じっと見つめていた受付嬢メア。


そのメアが、突然何かを思い出したような顔になった。


メア 「ルーク……?」



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