第20話 嘘つきジャック
ジャック「その、魔物を倒すのに時間が掛かって、もうポーリンは死んだ可能性が高いだろうから、もういいかなぁと思ってしまって……」
メア「ナニソレ酷い……仲間でしょ?」
ブル「まだ生きてるかも知れなかっただろう? 確認には行かなかったのか?」
ジャック「確認? ああもちろん、行ったよ、確認は大切だからね。パーティのメンバーは戦闘で疲れていたので休ませておいて、僕が自らね。
そしたら、ポーリンの後ろから魔物が迫っているのが見えて……
パーティのメンバーも疲れていて、これ以上の戦闘には耐えられないと判断して、やむを得ず撤退したんだ……
そう、あの時は、しかたなかったんだ!
僕はリーダーとして責任がある、パーティを全滅させるわけにはいかない! 場合によっては誰かを切り捨ててでも全体を生き残らせる判断をする必要がある時もある事もある、それがリーダーってもんだろう?!」
ブル「……確かに、パーティが全滅するような状況だったなら、仲間を助けられなくても仕方がないケースもある。パーティのリーダーは時に、非情な判断をしなければならない時もあるものだな」
ジャック「そうでしょ!」
ブル「だが、本当に、やむを得ない状況だったのか? 本当に?」
ジャック「え?」
ポーリン「ジャック、そうやって息を吐くように嘘をつく癖、直したほうがいいわよ。あなた “嘘つきジャック” って影で言われてるの知ってる? あの時……周囲に魔物なんて居なかったわ」
ジャック「何言ってんだ失礼な! 嘘なんかついてない、君が倒れた後、魔物が現れたんだよ。君は気を失ってたんだから知るわけないだろう!」
ポーリン「…じゃぁなんでアタシは生きてるのよ?」
ジャック「それは、誰かに助けられたって聞いたぞ?」
ポーリン「アタシはあの時、身体は動かなくなってたけど、意識はちゃんとあったのよ」
ジャック「え」
ポーリン「置き去りにされた後、なんとか自力でポーションを飲んで、それでかろうじて歩けるようになったのよ。そんな状態でもしアンタが言うように魔物が来ていたら、たとえゴブリンだったとしても助からなかったと思う。そもそも、本当にアンタが確認に来てたなら、歩いてるアタシと会えたはず。でも誰にも会わなかったわ」
メア「つまり、魔物なんていなかった、ジャックが戻ったというのも嘘ってことね」
ポーリン「その後は、ポーション飲みながら歩き続けたんだけどポーションじゃ毒は消えないから……とうとう手持ちのポーションもなくなって、毒のダメージが増してきて、いよいよ駄目かというところでルークに助けられたのよ」
ルーク「へぇ」
ポーリン「へぇってルーク、他人事みたいに……あなたがそんな態度じゃ私が話を作ってるみたいじゃないのよ」
ジャック「そ、そうだ、嘘だ! この女が嘘を言ってるんだぁ!」
ポーリン「ほらぁ……」
ブル「ああもういい。ジャック、お前の言う事はコロコロ変わって信用できない。パーティの他のメンバーに事情聴取しよう」
ジャック「じ、じゃぁ僕が呼んできます!」
ブル「いい、お前はここに居ろ。口裏合わせはさせん。メア、誰かギルドの職員を行かせろ」
メア「アタシが行ってきます」
だが、呼びに行くまでもなく、パーティのメンバー達はポーリンが戻ったと聞いて既にギルドに全員が集合していたのだった。
メンバーは別々の部屋に隔離され、ブルが一人ずつ個別に事情聴取を行った。
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