第19話 毒蛇に噛まれるなんて間抜けだよね
冒険者ギルドに到着したルークとポーリン。ルークが扉を開き中に入ると、一瞬視線が集まるが、すぐに興味を失い散っていった。
だが、ルークの後ろからポーリンが入ってきたのを見て、室内がざわめいた。
『ポーリン!』
ポーリンの姿を発見した受付嬢がカウンターから飛び出してくる。
受付嬢「無事だったのね?! 良かった! ジャック達が戻ってきて、アナタは死んだなんて言うから…」
ポーリン「メア! 生きてるわよ。そう……ジャック達は無事に戻ったのね?」
メア「何があったの? やっぱりジャックの報告は嘘だったの?」
ポーリン「死にかけたのは嘘じゃないわ、毒蛇に噛まれて動けなくなってね。でも、ここに居るルークが助けてくれたのよ」
メア「ジャック達はどうしたの? 一緒だったんでしょう?」
ポーリン「ジャックは、毒で動けなくなった私を置き去りにして行ってしまったわ」
メア「どういう事? 詳しく聞かせて。いや待って、ギルマス呼んでくる!」
ポーリンが戻ったと聞き、ギルドマスターのブル・ケネルが詳しく話を聞きたいと執務室にポーリンを呼んだ。
(ブルは犬系の獣人である。大男というわけではないがガッシリとした体つきで、ブルドッグのような顔をしている。)
ルークもポーリンを助けた者として証言してくれと一緒に付き合わされた。
ブルに、何があったか詳しく説明するポーリン。
ポーリンの話がちょうど一段落した頃、執務室の扉をノックする音がした。ブルが入室を許可すると、扉が勢いよく開きジャックが駆け込んできた。
ジャック「ポーリン! 無事だったんだね? 良かった、本当に良かった!」
大げさに喜び、ポーリンを抱きしめようとするジャック。だが、手を突っ張ってその突進を防ぎながら、ポーリンは汚いものを見るような目を向ける。
ジャック「どうしたんだい? ああ、すまない、見捨てられたと思ったんだね? 違うんだよ、後で助けに戻るつもりだったんだ」
ポーリン「で、結局戻ってこなかったわけね」
ジャック「それが……その……ちょっと色々アリマシテ…
…そんな、しょうがなかったんだよ! そんな責めるような目で見るんじゃねぇ!
いや、その、オホン……だいたいオマエ、いや、君だって悪いんだよ? 毒蛇に噛まれるなんてさぁ、冒険者としては間抜けな事だろう? でも、無事で良かったじゃないか! いやぁ、よかった良かった。
さあ、仲間たちが待ってるよ早く帰ろう!」
そう言いながら、ジャックはポーリンの腕を掴むと無理やり引っ張って部屋から出ていこうするが、その手を払ってポーリンが言った。
ポーリン「間抜けで悪かったわね、アンタが毒蛇を私に投げつけたの、気づいてないとでも思ったの?」
ジャック「え……
(まずい、気づいてたのか)
いや、それは……違う、違うよ! 木から急に蛇が降ってきて、驚いて思わず払ってしまったんだ。そしたらその先にポーリンが居て……」
ブル 「おいジャック? さっきから聞いてると、お前がギルドに上げた報告と随分と話が違うようなんだが……? ポーリンは沼で魔物に襲われて死んだんじゃなかったのか?」
ジャック「…ソ……ソウデス、ポーリンは魔物に襲われて死にました……」
ポーリン「生きてますけど? 沼地の魔物は確かに手強くて撤退せざるを得なかったけど、全員無事に逃げ果せたじゃないの! 死にかけたのはあんたの
ジャック「だからわざとじゃないって! 僕が故意にやったって証拠でもあるのか? だいたい君は後ろを向いてたじゃないか、僕がわざとやったのを確実に見たのか?」
ポーリン「そ、それは……そこまではっきりと見たわけじゃないけど……」
ブル「わざとかどうかはともかくとしてだ。ジャック。ポーリンが毒蛇に噛まれた事を知っていて、どうして治療もせずに置いて行ったんだ? 蛇毒くらいなら、毒消しか【キュア】を掛けてやれば済む話だろうに。お前のパーティには確か【キュア】を使える奴がいたはずだろ?」
ジャック「そ、それは、その…途中で魔物に襲われてしまったんだ! それで…」
ブル「で、その魔物は撃退して自分たちだけ無事に街に戻ったというわけだな? ポーリンの事はすっかり忘れて?」
ジャック「え……いや、それは、その……気が動転してて……、ポーリンはもう死んだだろうと、ちょっと、勘違いをしてしまったのかなぁ……ははは」
ポーリン「笑って誤魔化せると思ってるの?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます