第16話 冒険者ギルドに行こう

ポーリン「そのマジックストレージ? かなり高価な魔道具なんじゃないの?」


ルーク「ああ、爺ちゃんに貰ったんだ、若い頃に使ってたけど、もう自分は必要ないからお前が使いなさいって。便利だよね」


ポーリン「どれだけ入るの?」


ルーク「んー、前に魔物二百匹くらい入れたら一杯になったから、それくらい?」


ポーリン「伝説遺産級アーティファクトのやつじゃ、それ……国家予算級の価値があるやつよ、絶対なくさないようにしなさいよ!」


ルーク「ああ、大丈夫、僕以外使えないようになってるから」


ポーリン「そ、そう、ならいいけど……


…あなたと一緒に冒険者やったら色々と快適そうねぇ。ねぇ、ルーク? 冒険者やる気はない? たしか【ヒール】も使えるのよね? 攻撃は私が担当するから戦う必要はないわ、回復支援系メンバーとして居てくれれば」


ルーク「冒険者? あまり興味ないかな。爺ちゃんの世話しなくちゃいけないしね」


ポーリン「そっか……そうね、お爺さんを放ってはおけないものね」




   * * * * *




そうこうしているうちに、ラハールの街に着いたルーク達。


門兵「おう、ポーリンじゃねぇか、今日も……


…いや今日は一段と美人だね、どうした?」


ポーリン「いつもクエスト帰りで薄汚れた格好ばかり見られてるからね」


門兵「そういや今日は服も髪も綺麗だな、クエストの帰りじゃないのか?」


ポーリン「そうだけど、今日はちょっとね、いい人(【クリーン】が使える人)と一緒だから」


門兵「いい人(恋人)だと?!」


門兵はポーリンの後ろに居たルークを睨んだ。


門兵「誰だお前、見掛けない顔だな? なんでポーリンと一緒に居るんだ?」


ポーリン「森で色々あってね」


門兵「色々? まさか……あんな事やこんな事や、色々なこと、やったんじゃなるまいな?!」


ルーク「…? ポーリンとは森の中で偶然会っただけだよ。具合が悪そうだったから送ってきたんだ。僕は食材を売りに来たんだ、商業ギルドの許可証もあるよ」


門兵「なんだ、商人か。てっきりポーリンの……かと…」


ルーク「?」


門兵「なんでもない、通っていいぞ! さっさと行けよ」




   * * * * *




入城手続きが終わり、ラハールの街に入ったルーク。今夜酒でも飲みに行かねぇかいやよいいじゃねぇかいそがしいのまた今度ねいつもつれねぇななどというやりとりをしている門兵とポーリン。


ルーク「じゃぁ僕はこれで」


ポーリンを置いてルークはさっさと行こうとする。


ポーリン「ちょ、待ってよ、まだ、助けてもらったお礼をしてないわ」


ルーク「ああ、ごめん、そう言えば倒した獲物も収納したままだったね。どうする? 君の家まで運ぼうか? それとも冒険者ギルドでそのまま買い取りしてもらう?」


ポーリン「そうね、冒険者ギルドに行こうかしら、クエスト失敗の報告もしないといけないしね……」


ルーク「失敗?」


ポーリン「そうよ、毒の沼の魔物の素材の納品。違約金取られるけど仕方ないわ、死ぬよりはマシだからね。仲間達がどうしてるかも気になるし」


ルーク「ポーリンを置き去りにした連中? まだ仲間だと思ってるの?」


ポーリン「そうね、 “元” 仲間達ね。毒蛇に噛まれて動けなくなった私を置いていった判断は、客観的に見れば間違っていたとは言い切れないかも知れない。でも、見捨てられた側としては、感情的には割り切れないわね。もう一緒にはやっていけないと思う…」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る