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「それは仕方がなかろう。幼女と違って18歳未満と判断する基準が難し過ぎる。人目に触れない所で楽しめば良いんだよ。共有しようとするからダメなんだ」
「仮に金銭目的ではなく単に猥褻画像の所有、或いは同じ趣味を持つ者同士での単純な共有。生身の少女と勘違いした者が通報した場合はどうしますか?児童ボルノ検知システムが反応してしまう例も出てくると思いますが」
「セクサロイドと判明した時点で罪に問う必要はないだろう。少女に見えたって少女じゃないと言われてしまえばそれまでだ。犯人も被害者もいないんだから。誰も傷付くものはいないんだ。後は何か話し合うべき事はあるかね? 」
園田が一同を見回す。
「強いていうなら少子化問題を加速させるのでは、と危惧する専門家がいます。元々異性とのコミュニケーションが苦手、バツイチ、健全な独身の男女でも恋愛など面倒と思えばセクサロイド、若しくはアンドロイドに逃げてしまう。メンテナンスや修理費は掛かるが、子供の養育費教育費と比べれば微々たるものです。例えば従順で自分好みのアンドロイドに情が傾き、離婚してしまう夫婦もいるらしく──」
環境大臣の木本が別の問題を提議した。
「性欲だけの方が余程単純ですなあ。アンドロイド相手に恋愛感情まで抱くとは、全く」
世も末だと言わんばかりに農林水産大臣の近藤が大袈裟に溜息を吐いた。
「所詮相手は生身じゃないんだ。疑似恋愛に過ぎんだろうに」
「セクサロイドとアンドロイドの外見上の違いはそんなにありませんからねえ。性器がリアルか飾り程度のものかという違いだけで。勿論、セクサロイドの方が総体的に容姿は美しい傾向にありますが一緒に暮らしているうちに恋愛感情が芽生え、性行為という流れなんでしょう」
「馬鹿馬鹿しい! 」
園田は唾こそ吐かなかったが、嫌悪感で顔を歪めた。
この国にとっては少子化対策は以前からの深刻な課題である。
内心では女性の社会進出など嫌悪していた。
手っ取り早く知恵を奪えば出産と子育てのみに従事せざるを得なくなる。
経済力を失った女性は男性に頼るしかなくなり、晩婚化に歯止めが掛かる。
学習するなとまでは言わないが、女性は中卒で十代で結婚、大昔のように若いうちから出産すれば少子化問題は直ぐに解決である。
女性の社会的地位とは産み育てた子供の数によって決まるべきだ、とかなり古い価値観で考えていた。
男性と女性とでは年齢に対する感覚の違いがあるのは致し方ない。
女性が出産する為には年齢上のタイムリミットがあるのだから、と。
「ああ、だがレイプ問題での話し合いで性器は全て無くすと決めたんだから、これからはそうした事は減るに違いない。性行為がまともに出来ない相手では飽きて生身の異性の魅力を再認識するだろう」
「セクサロイドは残すんですよね?恋愛対象としてはセクサロイドも該当します」
尾形が矛盾点を指摘する。
「ううむ。腹が立つ!どいつもこいつも犬や猫を見習うんだ!特に魚なんか凄い!いっぺんに産む卵の数が普通じゃない。本来セックスとは種を絶やさない為の行為なんだぞ。それを子供も産めない相手とばかり励みやがって! 」
「魚は生き残れる個体数が非常に少ないんですよ。恋愛感情を抱くな、という事程難しい注文はありませんしねえ」
外務大臣の田村がチャカした。
尾形はセクサロイドこそ製造禁止すべきだと考えていた。
欲望を満たす為のあらゆる性産業が溢れ却っている。
セクサロイドに多少の規制を加えたところで風紀は乱れ、倫理が崩壊していく。
人間にソックリで精巧である点が特にまずい。
一度定着してしまった腫瘍を法律で完全に摘出し取り去る事は困難だ。
膿が膿を生み出していく。
気付いた時には全身に転移している。
「幼児型なんてあるから少子化が加速しているんじゃあないか?大昔は不妊治療が高額であっても必死に子作りに励んだものだが、今の女性達は努力に欠けているんだよ。社会進出だの権利だの言う前に、出産こそ優先して貰いたいものだ。男性にはそれだけは出来ないんだからねえ。三人は最低でも産んで貰わないと困る」
「何かこう、良い謳い文句はないですかね」
官房長官の村井が久しぶりに話しに加わった。
「大昔に産めよ増やせよというのがあったらしいなあ。戦時中だから産んでも産んでもお国の為に死んでった訳だけど。ははは!いくら産んでも間に合わないくらいねえ。今もそうだよ。どんどん産めよ増やせよだ! 」
話しの流れが嫌な方向に進んでいると尾形は顔を顰めた。
「幼児型のアンドロイドは全て回収としたらどうだろうか。幼児型は問題しか生まない事がよーく分かった。女性の晩婚化が加速して出産に対する意欲が失われる。産みたいという気持ちに女性達を追い込まないとダメだな」
「お待ち下さい。幼児型を回収という前にセクサロイドを禁止した方が良いのでは?総理も仰っていたではありませんか。男女の愛が無ければ子供は産まれません」
村井の指が記録しようと動き掛けた時、尾形が口を開いた。
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