231:これからもずっと・・・

 バシィィィ!!!


 『ウガァアアアッ!!』


 セレスティアは、飛竜のカイエルに乗り、上空から魔物に狙いを定め、弓矢で仕留めた。魔物はセレスティアの一矢で見事息の根を止めていた。


 「これで最後かな?」


 セレスティアは他に魔物がいないか、上空から確認していた。

 今日は仕事の一環で、フェリス王国の都心部から少し離れた村で、小さな規模のスタンピートに襲われそうになっているとの一報が入ったのだ。それを食い止めるためにセレスティアを初め、竜騎士が数人派遣されたのだった。そしてスタンピートが村に到達するまでに、魔物を駆逐しなければならなかったのだ。

 

 『ギャウギャウ(気配はないから大丈夫だろ。)』

 

 「カイエルが言うなら大丈夫ね。」 


 カイエルのお墨付きをもらったので、セレスティアは帰還することにした。



 「それにしても・・・本当にこれ凄いわね。」 


 セレスティアはカイエルの背に乗ったまま、弓をマジマジと見つめていた。


 『キュル?(そんなにか?)』


 「えぇ、この天雷弓、魔力が溜まってきた頃にぶっぱなすと、本当に身体が軽くなるのよ。」


 セレスティアは、以前ユージィンから打診があった天雷弓を結局使うことにした。実際、魔力を矢に変換するこの不思議な武器は、妊娠してから、魔力帯電を起こすようになっていたセレスティアの身体にはかなり相性が良かったのだ。

 だが、この伝説の武器は誰でも使えるものではなく、武器が使い手を選ぶ権利を持っており、セレスティアは見事、天雷弓のマスターとして認められたのだ。


 『キュルキュルルルルキュル(よかったな。けど間違っても俺に当てんじゃねーぞ、その弓矢、俺でも気を抜いてたらヤバい奴だから。)』


 「あれ?でも前、矢に当たっても平気じゃなかった?」


 『ギャウギャウギャウ!(あれは俺もそれなりに魔力で身体強化してたからだよ。普通の状態なら俺でも刺さるやつだしな!)』


 「あら、そうだったの?・・・ま、当たったら当たったで何とかなるわよ。」


 セレスティアの脳筋が発揮された。


 『ギャウーーー!(当てるなよ!)』 


 そしてセレスティアはどちらかと言うと、弓矢よりも剣技の方が得意なのだ。


 「あ、そういえば、今日ね」


 『ギャウー!(スルーかよ!)』



 結婚してからも、セレスティアは竜騎士の仕事に精を出し、カイエルも相変わらず飛竜に擬態していた。


 「アンティエルさんが夕飯ご馳走するから、泊りにおいでって伝言が今朝あったらしいのよ。行くでしょ?」


 『キュルー(姉貴の飯は美味いからな!)』


 「じゃ、急ぐわよ!」


 『ギャウウウウウウ!(まかせろ!!)』



 飛竜のカイエルに乗ったセレスティアは、幼い頃の自分を思い出していた。



 空を駆ける赤い飛竜イールの姿を見て、セレスティアの夢が決まった時のことを、


 ___私もあんな綺麗な竜に乗って空を駆けてみたい!___


 そして今、カイエルは他の飛竜よりは厳つくはあるけれど、黒い綺麗な鱗を持つ竜なのだ。


 「・・・カイエル。」


 『キュル?(どうした?)』


 「これからもずっとよろしくね。」

 

 『キュ?(?)』


 カイエルは急に、どうしたものかとは思ったが、セレスティアから感じる波長は心地いいものであることはわかっいたので、


 『ギャウギャウ!(おぅ、当たり前だろ。)』 


 「ふふふっ」


 セレスティアは、まさか自身の相棒である飛竜と結婚することになるとは、『竜の御目通り』では思いもしなかったが、


 今は素直にカイエルの番で良かったと、セレスティアの心は温かいもので満たされていた。






 そして・・・

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