209:『竜の祖』の妊娠事情~後編~

 「ふーん、よくわかんねぇけど、人間よりもちょっと長いくらいなんじゃねぇの?」


 カイエルはそもそも妊娠事情をよくわかっていなかった!


 「ちょっとどころじゃないわよ!」


 セレスティアはカイエルのボケな発言に突っ込んだ。


 「7年・・・私30歳で生むってことですよね?」


 セレスティアは妊娠期間が7年と聞いて、少々複雑な心境であった。(うーん、まさか7年も身ごもるなんて・・・)その様子を見たラーファイルは苦笑いで、

 

 「まぁ人の歳ならそういうことになるんだけど・・・」


 「うむ、肉体年齢は変わらんがのう。」


 「え?」


 肉体年齢は変わらない?一体どういうことなのかと思ったが、ラーファイルが説明してくれた。

 

 「つまりね、妊娠期間中は受胎した時から肉体は歳はとらないんだよ。肉体年齢は出産するまで一旦止まるってわけ。」


 ラーファイルがウインクしながら言った。


 「え?それって、妊娠期間は老けないって解釈であってます?」


 「そーいうこと。」


 ラーファイルはニカっと笑った。


 「まぁ、総じて言えることなのだけど、寿命が長い種族ほど、妊娠期間は長くなるものよ。人間を基準にすればセレスティアが驚くのも無理もないわね。」


 イシュタルが補足に説明したことに、セレスティアは驚いていた。


 「え?もしかして人間だけが、十月十日なんですか?」


 「この世界では人間が大半だから、そう思うのは無理もないのだけど、いろんな種族がいるから、種族ごとに妊娠期間は違うわね。例えば獣人だったら半年もかからないし、他には長寿である魔女や魔人なら5年ほどだったしね。種族形態が違うのだから、当然と言えば当然なのだけどね。」


 「へぇ~知らなかったわ。」


 セレスティアは本来であれば知り得ない情報だっただけに、本当に関心していた。


 「ただね、妊娠期間は7年だからゆっくりと成長するし、生活も今のところ変わらず過ごしてもらえばいいのだけど、1つだけ注意点はあるから、そこだけは気を付けてほしいの。」


 「注意点ですね、わかりました!」


 「今のところは先にもあるように、今までと変わりなくて大丈夫よ。立ち回りもしてもらっても大丈夫。だた臨月近くになると話は違うのよ。」


 「というと?」


 「臨月近くになると、お腹が膨れるのよ。一気に。それまでは魔力というか力を蓄えているだけだから、大きさはあまり大きくならないの。だから立ち回りをしても大丈夫なのだけどね。だけど生まれる前の最後の3ヶ月で途端に急速に赤ちゃんの大きさになるわ。そこだけ気を付けて欲しいの。」


 「うむ、産まれる3か月前ほどで体の形成を整えるといった感じになるのじゃ。だからその時は流石に今まで通りという訳には行かぬ故、さすがにお主が今しておる竜騎士の仕事はちと難しいじゃのう。」


 「あーそういうことなんですね。でもそれぐらいなら、普通の妊婦さんと変わらないと思うので、大丈夫と思います。」


 それを聞いて、セレスティアは安心した。妊婦になれば、仕事のセーブは多少は仕方がないとは思っていたが、7年ずっとと言われたらどうしようかと思っていたからだ。


 「そう?それなら良かったわ。今のところお酒も大丈夫だからね。だけど、身体をつくる臨月近くになったら、お酒はダメよ。やっぱり体に影響あるからね。そこだけ気を付けてくれたらいいわ。」


 「はい!」


 「他に質問はある?」


 一通りの話を終え、イシュタルはセレスティアに確認した。セレスティアは少し戸惑い気味ながらも、気になっていたことを質問することにした。


 「あ・・・はい。いいですか?」


 「えぇどうぞ。」


 「生まれてくる子は、やはり


ハーフなんですか?」


 そう『竜の祖』カイエルと人間である自分との子供がどういった種族になるのか、ずっと気になっていたのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る