207:セレスティア帰宅
魔物討伐から、セレスティアは懐妊により一番に帰宅することになったが、イシュタルもアンティエルも、やることが残っているということで、セレスティアを家に送り届けてから、『竜の祭壇』に戻っていった。話は改めてということになったが、イシュタルからは
「セレスティアは妊婦ではあるけれど、生活は今までと同じように、竜騎士勤務も今までと同じで大丈夫だからね。」
と言い残していった。
「え?激しい運動とか大丈夫なんですか?」
セレスティアは意図せず妊娠したものの、やはり自分の中にもう一人の命が宿ったのであれば、慎重に行動した方がいいのではと思っていたのだが、返ってきた答えは意外なものであった。
「ふふ、竜の子は強いのよ?むしろセレスティアが危機になった時には助けてくれるほどにね。実際そうだったでしょう?だからさほど気にはしなくていいわ。」
「あ・・・」
イシュタルに言われてみて、セレスティアは思い出した。イリスの攻撃を難なく撥ねかえしたことを。
「ね?だから気兼ねなく普段通りで大丈夫だから。落ち着いたら、ちゃんと『竜の祖』の妊娠について詳しく話してあげる。それまでセレスティアのお身内の方にもまだ言っちゃだめよ?」
そう言いながらウインクしてイシュタルは去っていった。
(普段通り?立ち回りも大丈夫って・・・ことでいいのね?)
妊娠したばかりということではあるが、確かに特段自身の身体の変調は今のところ感じられるものはなかった。
(・・・まぁイシュタルさんが大丈夫って言うんだから大丈夫でしょ!)
セレスティアは深く考えるのはやめ、家に帰ってきたことで安心したのか、シャワーを浴び、軽く食事を取ってベッドにもぐりこんだ。
(赤ちゃんかぁ・・・全然実感ないけど、カイエル・・・早く帰ってくると・・・いいな・・・)
セレスティアは自覚はなかったのか、体は疲れていたらしく、横になれば早々に眠りについた。
カイエルが帰って来たのは深夜遅くだった。
カイエルが寝室に入ると、セレスティアが寝ていることに気が付いた。できるだけ物音を立てないように近づいて、そっとセレスティアの頭を撫でた。
「う・・・ん。カイ・・・エル」
一瞬起きたのかと思ったが、寝言であった。
「セレスティア、ありがとうな。俺達の子供。」
カイエルがセレスティアを見つめていると、なんとも込み上げるものがあった。実はカイエルに、子供ができたのは初めてだったからだ。『竜の祖』の中でカイエル以外は、既に子を持ったことがある経験者であった。
「今まで、姉貴や兄貴たちにはいたけど、こんなに嬉しい気持ちなんだな・・・」
『竜の祖』たちは滅多に子供はできない。ゆえに誕生した子供は、姉弟間の中で歓喜された。当然、叔母や叔父に当たる彼らには、堪らないほど愛しい存在になっていた。カイエルも当然叔父になった時には、姪っ子や甥っ子になった子達を可愛がっていた。
カイエルもまさかセレスティアと同じくまさか1回目でできるとは思っていなかったので驚いてはいたが、何よりも子供ができたという事実が僥倖であった。
カイエルもセレスティアの同じベッドで横になり、セレスティアを後ろからそっと抱きしめて寝に就いた。
それから、数日後イシュタルらが約束通り、セレスティアの家に訪問にきた。
※次回は5/9の更新になります。
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