185:『竜の祭壇』へ
アンティエルの話では、ヴェリエルの番のヒルダは、『竜の祭壇』の直ぐ近くにある洞窟に留置しているとのことだった。
ヒルダは元々その洞窟で『竜穴』からの集約したエネルギーを吸収する為に潜伏していたところを発見された。その場には人と同じくらいの大きな紫水晶が置いてあったという。魔物騒動のあった各地に設置されていた紫水晶は竜穴のエネルギーを吸収して、この洞窟にある大きな紫水晶にそのエネルギーを転送していたのだ。同じ紫水晶がいわばパイプの役割を担っていたのだ。
ダンフィールがフェリス王国に到着し、アンティエルと合流をすべく、フェルディナントとアンティエルの住むキルンベルク領にエメリーネと共にやってきた。そしてアンティエルとダンフィールが不自然な龍脈の気のエネルギーの流れを察知したことで、このことが露見したのだ。当然、見つかったヒルダは従えた魔物と共に抵抗を試みたものの、魔王に覚醒しきれていないヒルダはまだ力不足だったために、『竜の祖』のアンティエルとダンフィールを相手にあえなく捕えられてしまった。
そしてヒルダと相見えたことで、ヒルダがヴェリエルの番であることを確信したのだ。その後、捕えたヒルダの口からヴェルエルがテル・ホルストに向かったことを聞いた二人は急ぎ、竜の姿となって、テル・ホルストに駆けつけたのだ。そしてヒルダは二人の作った強力な結界に閉じ込められ、見張りをフェルディナントが率いる騎士団と竜騎士達が見張りをすることになった。
「あーだけど俺は、別方向に異常を感じたから、途中で姉貴と別れたんだけどな。で、俺はそっちに向かったら、ラーファイルと遭遇してよ。」
ダンフィールの話では、異常を察知した方角というのはハインツのいるビェリーク村だった。当然魔物騒動の起こった村である故、ここにも龍脈が流れており、そして竜穴の傍には紫水晶があり龍脈のエネルギーが吸収されていた。ダンフィールとエメリーネはそれを破壊した直後にハインツとラーファイルと合流することができたという。
「ヴェリエルとイシュタルとでは属性の相性が悪くての。はっきり言ってしまえば、イシュタルは火を司ることから、水を司るヴェリエルとは相性が悪いしのぉ。それに・・・」
アンティエルはユージィンを見て、
「妾とて、みすみす弟がドラゴンスレイヤーの餌食になるのを黙って見てはおれんからの。恐らくかのドラゴンスレイヤーのマスターはイシュタルの気持ちは多少は汲むであろうが、だがそれもイシュタルを傷つけられたら、きっとそんな情けは吹っ飛ぶじゃろうしな。」
アンティエルは危惧していた。ユージィンはきっとイシュタルに何かあればきっと容赦はしないであろうと、わかっていたからだ。
「・・・それは、その気持ちはわかりますね。」
セレスティアもカイエルが傷付けられれば、きっと相手を許さないであろうことは、想像に難しくはなかった。
「誰しも愛しい人を傷付けられれば、許せんのは道理じゃな。じゃがそれでも、妾は弟を見殺しにはできんかったのじゃ・・・。」
「アンティエルさん・・・」
セレスティア自身も兄弟がいるので、アンティエルの気持ちが痛いほどよくわかった。
そして・・・事の経緯を皆が聞き終え、
「じゃ、取り急ぎ向かおうか。『竜の祭壇』へ」
ユージィンの一言で、全員が頷いていた。
テル・ホルストの港町から、ユージィン一行は急ぎ『竜の祭壇』へ向かった。
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