180:女神の啓示
セレスティアが恥ずかしさで顔を伏せていたところに、エメリーネが手をブンブンと振って、セレスティアの傍にやってきた。
「セレスティアさん、お久しぶりです!」
「えぇ、本当に!エメリーネさん見るからにお元気そうで良かったわ。」
「はい!私元気だけが取り柄ですから。」
そう言って微笑むエメリーネの見た目は以前より少し大人びてはいたものの、素直な愛らしいところはそのままだった。そしてエメリーネのうさ耳がピョコピョコと動く様はセレスティアのモフモフしたい衝動を搔き立てられるものだった。(相変わらず可愛い!!モフモフしたい!)だが、流石に空気を読んで平静を装っていた。
「旅をしていたと聞いてますけど、フェリス王国に来ていたんですね。」
「あ、その事なんですけど、実はアクネシア様から啓示があったので、急遽フェリス王国に来たんですよ。」
「え?そうだったのね。アクネシア・・・もしかして女神様からの啓示ってこと?」
アクネシアは踊りと楽器を司る三神の一人と言われている女神だ。その女神からの啓示という言葉にセレスティアが一体どういう事なのかと首をかしげると、エメリーネは言葉を続けた。
「あ、実は最近なんですけど私『女神の踊り手』になったんです!」
「え、そうだったの!?」
セレスティアは驚いたものの納得した。『女神の踊り手』は女神に認められるほどの踊りをマスターし、尚且つ女神の加護を与えられた者だけが『女神の踊り手』の称号を名乗ることができるからだ。エメリーネは、なりたいと言ってた『女神の踊り手』と成ることが適ったのだ。
「うわぁ、それはおめでとう!凄いわ。エメリーネさんならなれると思っていたけど、思ってた以上早かったのね!本当におめでとう!」
セレスティアは本当に心から称賛していた。
「えへへ、ありがとうございます。」
エメリーネは照れ臭そうにしていた。
「あ、それで、女神の啓示ってどういった内容だったの?差し障りのない範囲でよければ教えてもらってもいい?」
「あ、ソレは大丈夫ですよ。啓示を受けたのはアルカディア王国のレフテラという町で舞を披露している時でした。踊っている最中に女神から話しかけられたんです。『フェリス王国に行きなさい。』って。それでどういうことかと思ってたら『災いが育ちつつある。今ならば、まだ間に合うから早く行きなさい。』って言われちゃって・・・それで急遽フェリス王国に来たんですよ。ただ、アルカディアは島国だったので、来るのにちょっと時間かかっちゃったんですけどね。」
エメリーネは少し申し訳なさそうに言ったが、セレスティアは首を横に振った。
「ううん、それを教えるためにわざわざ遠いところから駆けつけてくれたんでしょ。その気持ちが本当に嬉しいわ。ありがとう。」
セレスティアは、エメリーネの手を両手で包み込んで感謝を表した。そこでダンフィールが割って入った。
「それで、まぁ続きなんだが、普段はあんまり龍脈は気にもとめてないが、その啓示が気になったから俺もアンテナを張り巡らせてたんだよ。そしたら龍穴のエネルギーが不自然になってることに気が付いてな。で、アンティエルの姉貴に相談しに行ったんだよ。そしたらヴェルエルの番が魔王化しかけてるって話で、女神はこの事を言ってたんだなってわかったってわけよ。」
龍脈は主に地中にある為、異常があれば土を司るダンフィールがいち早く気が付く。のだが本人が言っているように、普段は気にもとめない為、女神の啓示がなければ本当にスルーしていた案件だったのだ。
「僕もね、ハンイツが何かおかしなことになってるって気が付いてさ。」
ラーファイルも異常を察知したということで、その時の状況を話始めた。
「え、ラーファイルさんは遠征に付いていってないはずだけど、そんなこともわかるの?」
セレスティアは驚いていたが、ラーファイルの次の言葉にさらに驚いていた。
「うん、わかるよー。離れていてもね、番に何か異常があれば察知できるよ。とは言え、ソレは番を認識してからの話なんだよね。番と認識する前では、僕たちもなかなか察知するのは難しくてね・・・」
ラーファイルが最後方が言い淀み、少し悲しそうな顔になっていたことをセレスティアは見逃さなかった。そしてその言葉の意味は後ほど知ることになる。
※次回は3/22(火)の更新になります。
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