177:イリスの誤算
「だが、もう遅い!!青玉の竜のことは残念だが、すでに龍脈から流れている龍穴のエネルギーは、ほぼ回収済みだ!ヒルダ様に龍脈のエネルギーが集約すれば、そう時間をかけずともヒルダ様は魔王となる!!そうすれば人の世は混沌とするだろう!!」
イリスは勝ち誇ったように、高らかに告げた。
イリスの狙いは、魔王の器であるヒルダに龍脈のエネルギーを注ぐことで魔王化を狙っていたこともあるが、同時にヒルダの番であるヴェリエルをユージィンの手によって葬ってもらえば、ヒルダが絶望し魔王化に拍車がかかることはわかっていたので、それを狙っていたのだ。しかし、その様子を見てアンティエルは、溜息を付いた。
「お前はバカか?」
そういったアンティエルは、人型の幼女の姿になった。
「なん・・だと?!」
イリスはアンティエルの物言いに怒りを表していた。
「小僧の浅知恵と言うたであろう。そんなことはこっちはとっくに把握済みでな。すでに対応して、魔王化の者は捕えておるわ。」
「!!ば、ばかな!ヒ、ヒルダ様を捕えただと!?」
まさかのヒルダを捕えたと言う言葉に、イリスは驚いて目を見開いていた。
「小僧、お前は妾達『竜の祖』を侮りすぎじゃな。確かに、妾達はそう簡単に怪我をすることも病に倒れるようなこともないからな。それに、番に出会える地で、龍脈が集約することも周知のことじゃから、普段は竜穴にはさほど気にはしておらん。だがな龍脈は主に土の中じゃぞ?いくら番ができて現を抜かしておったとしても、自分の領分の異変に気付かぬほど、あ奴は愚かではなかったようでな。」
アンティエルは不敵な笑みを浮かべていた。ソレを見たセレスティアは、ダンフィールのことだとわかったのだ。
「さて、ヴェリエルの番の魔王化の手引きをしたのは小僧であろう?何のためにこんなことをしたのか吐いてもらおうかのぉ?」
アンティエルの口元は笑ってはいるが、目は全然笑っていないことにその場にいる全員がわかっていた。
「ちっ!」
イリスはさすがにこの場に留まっているのは不味いと思い、この場から逃げようと天雷弓を構えたが、それは一瞬で凍り付いた。手を凍らされてしまった為、弓を引くことができなくなったのだ。
「うぅ!!」
イリスは凍傷の痛みで、うっかり弓を落としてしまった。
イリスの手が凍ったのは、竜穴で横たわっていたヴェリエルの仕業であった。完全ではないが氷のブレスを放てるくらいには回復していたのだ。
『貴様・・・よくも・・・』
ヴェリエルの目は怒りに燃えていた。
『俺を謀ったのか?それに俺の番に魔王化の手引きだと?!お前は俺の番に一体何をした?!!』
本来水を司るヴェリエルのオーラは怒りの余り青白い炎に包まれているようであった。
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