176:アンティエルの推測
「姉貴がきた」
カイエルがそう言うと同時に、セレスティアとイリスの前に竜の姿のアンティエルとヴェリエルが降り立った。アンティエルが竜を癒すことができるテル・ホルストの近場の竜穴であるこの場所にヴェリエルを治療するために連れてきたのだ。
「アンティエルさん?!と青い竜?ど、どうしてここに?」
セレスティアは突如現れたアンティエルとヴェリエルに驚いていた。だが、ヴェリエルの腹の風穴を見て、なぜここに現れたのか納得した。
(そうか、青い竜・・・ヴェリエルさんだったかしら?重傷だったからアンティエルさんが連れてきたのね。竜穴は竜の癒しのスポットだから・・・)
しかし王都にいるはずのアンティエルがここにいる理由はまだ不明であったが。
「なるほど、手遅れにはならなかったっていうことか。竜騎士団長も詰めが甘い。」
イリスは、ヴェリエルとユージィンが対決することがわかっていた上で、まだヴェリエルが事切れていなかったことに、つまらなそうに呟いた。そしてセレスティアはソレを聞き逃さなかった。
「どういう意味?貴方、死んでくれててもよかったのに、っていう口ぶりよね?」
「そうだね、その方がこちらとしては都合がいいから。」
「なんですって?!」
セレスティアは意味がわからなかった。イシュタルから聞いた話では、ヴェリエルとイリスは結託している、つまりは仲間であると認識していたからだ、なのにユージィンに殺させようとしていたことに、セレスティアは驚きを隠せなかったのだ。
『ふむ、なるほどな。貴様の底の浅い計画はわかったのじゃ』
アンティエルはセレスティア達のやり取りを聞いて、イリスが何を狙っていることがわかったのだ。そしてその間に、ヴェリエルを竜穴に横たわらせていた。ヴェリエルの体は金色の粒子に包まれ、特に重傷な腹部には、光の粒子が濃くなっていた。
『大方、ヴェリエルの番の魔王の器を暴走させるために、ヴェリエルを亡き者にしようとでも思ったのじゃろう?』
「?!アンティエルさんそれってどういう意味ですか?」
アンティエルはイリスに強い眼差しを向け、言葉を続けた。
『ただでさえ、魔王化が進んでいるであろうヴェリエルの番じゃ。当然今は相思相愛の仲になっているであろうからな。そんな中、番を失えばたちまち混迷し暴走するのが落ちじゃ。カイエルは身に覚えがあるからわかるじゃろう?この小僧はそれを狙ったのじゃろう。』
思わずセレスティアはカイエルに視線を向け、カイエルは痛いところを突かれたとばかり、頭を掻きつつも目が泳いでいた。そしてイリスはアンティエルの話を聞いて、薄ら笑いを浮かべていた。
「さすが・・・伊達に『竜の祖』を束ねる光の竜ではないということですかね。御見それしましたよ。」
イリスはセレスティアの刃に切りつけられた傷を抑えながら、ゆっくりと立ち上がった。
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