170:第三の封印解除~後編~

 「セレスティア・・・」


 「!!」


 セレスティアはカイエルに名前を呼ばれ両肩に手を置かれたが、自身の大胆な発言の恥ずかしさのあまり、顔は俯いたままだった。


 「・・・そう言ってくれるのは嬉しいけど、今はだめだ。やっぱり姉貴を呼ぼう。」


 「!!」

 

 セレスティアはまさか断られるとは微塵も思っていなかっただけに、カイエルの言葉に驚いた。


 「?え・・・ど、どうして?」


 「・・・嫌なんだ・・・」


 「?!!」


 カイエルの『嫌』という言葉に、セレスティアは目を見開いてショックを受けていた。


 「そ、そうよね。ご、ごめんなさい。女から言うモノじゃないものね。」


 断られただけでもショックだったところへ、「嫌」という言葉を聞いてダメ押しされたのだと、セレスティアは動揺を隠せないでいた。カイエルはてっきり自分と繋がりたいと思っていただけに、自分が自惚れていたのだと、恥ずかしい気持ちになったのだ。セレスティアは謝りつつも、泣きそうになっていた。否、既に目に涙は溜まっていたため、こぼさない様に悟られまいとセレスティアは視線を逸らした。


 (うぅ、ここで泣いたらダメよ!余計にみじめになっちゃう!!)


 明らかに落ち込んでしまったセレスティアを見てカイエルは驚き、慌てて釈明しだした。


 「ち、違う!!そういう意味じゃなくて!!」


 「違うって?」


 「お、俺は!!」


 いったん言葉を切り、カイエルはすぐに次の言葉を紡ぎだした。


 「前にも言ったけど、俺もそろそろだとは思ってた。だけど、こんな形はいやなんだ。」


 「?」


 セレスティアはカイエルの言わんとすることがわからなかったが、次の言葉で彼の真意が伝わった。


 「ちゃんとした形で、それに俺から誘うつもりだったんだ!!なのに、こんな・・・こんな結界の為に『竜の祖』でないと対応できないからといって、そのためにお前を抱くようなことが俺はいやなんだよ!!」


 セレスティアは、その言葉に目を見開いた。


 「ごめんな。俺が不甲斐ないばかりにセレスティアから、そんなこと言わせる羽目になったんだよな。・・・ホント、ごめん!!」


 そういうとカイエルはセレスティアに頭を下げた。


 「・・・カイエル」


 そういうとセレスティアは自分からカイエルに抱き着いた。


 「セ、セレスティア?」


 「ありがとう。てっきり、自分から誘った私のことが嫌なのかと思っちゃった。むしろちゃんと考えてくれていたのね・・・」


 「あ、当たり前だろ!そういうことはシチュエーションもムード大事だからちゃんと考えないとなって・・・」 


 「ふふ、多分だけど、イシュタルさんに言われた?」


 「!!なんでわかったんだ?!」


 カイエルは驚いていたが、ムードとかシチュエーションなどの単語が、カイエルの口から出たことに、裏でイシュタルから言われたのだろうと、思い至ったのだ。


 「で、でも俺から誘うつもりなのは、初めから思ってたし・・・」


 「カイエル・・・ありがとう。でも私は・・・今がいいな?」


 「え!!」


 「ででで、でも、ここ草むらだし、ベベベベッドも何もないぞ?」


 カイエルはイシュタルから、女性の初めての時は、旅行先もいいとか、花をプレゼントするのもいいとか、いろいろと女子に受けそうなことを事前に教わっていたのだ。だが今の状況が思い描いていたことと全然違うことからかなりテンパってしまい、カイエルはかなりどもっていた!


 「私、今カイエルと繋がりたい・・・ダメ?」


 抱き着かれたまま顔を赤らめ濡れた目のセレスティアに、上目遣いで見つめられたカイエルには、もう抵抗できる術はなかった。


 「も、無理だ・・・」


言うと同時に、カイエルはセレスティアを強く強く抱きしめた。


 「あ・・・」


 「で、できるだけ優しくするつもりだけど、その俺も、ずっとセレスティアに触れたいと思っていたから、加減というか、抑えがきかないというか、・・・」


 カイエルは熱のこもった眼差しを、セレスティアに向けており、セレスティアもまたカイエルの放つ色気に当てられていた。


 「カイエル・・・カイエルの好きにしていいのよ。」


 「セレスティア!!」


 セレスティアのその言葉に、カイエルはついに陥落した。



 そして二人は深い深いキスをして、そのまま草原に沈んでいったのだ。




 ※次回更新は3/7(月)になります!

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