119:5年縛りの間に~セレスティアの実家~

 「俺はこの日を待っていた!!!」


 出勤して、竜騎士団支部の第二事務室に入ってきたかと思えばノアベルトの開口一番はコレだった。セレスティアも驚いて、目をまん丸にしていた。ちなみにここは、正規の事務員とは別の竜騎士達のデスクワークをする為の事務室である。


 「はぁ~短いようで長かったねぇ・・・」

 「特に変わらないでしょ。」

 「まぁ、確かにな・・・」


 ノアベルトを初め、ルッツやテオ、ケヴィンらは、本日で恋愛(正確には男女関係)5年縛りの終わりを噛み締めていた。5年の間にいろんなことがあった。

 セレスティア達が竜騎士になって1年後からは当然のことながら、後輩が入りセレスティア達が先輩として見本を見せる立場となった。仕事も当初は新人ゆえに右往左往していたものだが、今では独り立ちをして指図されずとも率先してやっていけるようになっていた。

 後輩については、やはり女性の竜騎士については、セレスティア以外の成り手は未だいなかった。女性で竜騎士になりたいという立候補者は増えてはいたが、やはり従来通りというべきか、飛竜が寄り付きもしなかったのだ。それでもセレスティアのように飛竜が女性を受け入れる場合があるかもしれないということで、今後も女性の候補者を受け付ける方向性ではあった。


 「あー!これで女の子を堂々と口説けるぞ!!」


 「まぁほどほどにね。」


 ノアベルトの宣言にルッツは苦笑いだった。

 

 「はは、ノアベルトの気持ちはわかるよ。俺も禁欲生活だったもんなぁ。」

 「同感同感。」


 セレスティア達の先輩である竜騎士達も激しく同意していた。それを聞いていた、後輩達は・・・


 「いいなぁ、先輩たち・・・」

 「俺あと、まだ3年もある。」


 などなど、後輩たちは当然、まだまだ5年縛りからは抜けられないので、ノアベルト達を羨望の目で見ていた。





 セレスティアの実家も、この5年縛りの間にいろんな変化があった。

 セレスティアの兄、ディーンは2年前に結婚した。ディーンは仕事にかまけて、全然恋人を作る気配がなかったため、本人よりも周りが焦ってしまい、お見合いを設定することになったのだ。相手は伯爵家の令嬢で、大人しい清楚な女性であった。恋愛結婚ではなく、そろそろいい年だからという理由でのお見合い結婚ではあったものの、意気投合したらしく、今も良好な関係を続けている。そして奥方は現在妊娠中である。 


 弟ショーンは、神官になるべくあれから、魔法学校に通い、現在もまだ学生ではあるものの、神官職の上位職である守護者(ガーディアン)の素質があるとのことで、有望視されていた。 


 そしてソフィアはというと、ソフィアもディーンとそう間を開けずに2年前に結婚をしていた。当時は理由を言わなかったが、なかなかお見合いには応じず、頑なに結婚を拒んでいたのだ。しかしさすがに行き遅れと呼ばれる年近くになってきた頃には、母ジョアンナの説得がものをいい、ソフィアもお見合いをして結婚をする運びとなったのだ。ソフィアもお見合いではあったものの、夫となった人物は優しい人物だったので、今のところ夫婦関係はこちらも良好のようであった。


 父セスはジョアンナとは以前とさほど変わらない関係のままであったが、ソフィアが嫁ぎ、ディーンが結婚をしたことで、現在はジョアンナが女主人としての家の仕事をディーンの妻に教えているらしい。だが、セレスティアの事があったので、嫁いびりをしないようにと、セスとディーンが目を光らせているとは、聞いていた。(ふむ、そういう意味では、私は少しは役にたったのかな?)とセレスティアは意地悪をされていたことが無駄にならなくて良かったと思っていた。


 

そして、『竜の祖』と番を含めたメンバーも、5年縛りの間に少々の変化が起きていた。

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