【完結】竜騎士の私は竜の番になりました！

118：5年縛り終了

　とある館にて、その少女は服もまともに着せてもらえず、奴隷のように扱われていた。その少女の不幸は、誰もその少女を助ける者がいなかったことだろう。むしろ、その場にいる全員から虐げられていたのだ。だから少女は絶望していた。そして自分の境遇を呪っていたのだ。

　少女は何度か逃げだそうとはしたものの、逃げ出そうとしたことがバレた時のお仕置きが、髪の毛を引っ張り振り回され、殴られるなど過剰なものであったことから、逃げることは諦めた。今は足を鎖で繋がれているので、脱出することは到底敵わなかった。

　　・・・・私はどうして生まれてしまったんだろう？こんな目に合うのなら、私なんて生まれてこなければよかったのに。・・・どうして・・・

　もう・・・どうでもいい・・・早く・・・早く死にたい・・・こんなこんな世界・・・どうして私がこんなめに！嫌だ・・・早く・・・死にたい・・・・

　少女の悲痛な思いは、やがてあるモノを呼び寄せた。

　声がしたのだ。それは悪魔のささやきだった。

　「一緒にこんな世界壊しませんか？」

　「な・・・あなたは？」

　声の方を振り向いた時、見知らぬ男が立っていた。その男は今まで見たことがないくらい、美しい男だった。

　あぁ・・・この人は、私を助けにきてくれた。やっと、やっと抜け出せる・・・

　ありがとう、私を見つけてくれて・・・

　セレスティアの自宅にて＿＿＿

　セレスティアが竜騎士になって、5年が経った。彼女は現在、23歳になっていた。

　「んーーっ」

　セレスティアはベッドの上で、伸びをしていた。18歳の頃からほぼ成長期は終わっていたとはいえ、セレスティアは少し大人の女性としての色気が身に付いていた。だが本人はその事には気付いていない。

　コンコン、とドアをノックする音が聞こえた。そしてドアが開くとそこからカイエルが顔を覗かせていた。

　「セレスティア起きたか？」

　今では、朝にはカイエルがセレスティアを起こすのが日課になっていた。とはいうものの、実際には、起こされるまでにはセレスティアは起きて待っているという具合だ。

　「カイエル、おはよう。」

　「あぁ、おはよう。朝食はできてる。早く準備しろよな。」

　「うん、ありがとうね。」　

　二人の同居はすっかり板についていて、食事の用意はカイエルが完璧にこなしていた。セレスティアは朝食だけでもすると申し出はしたものの、カイエルに頑なに断られ、今ではカイエルに胃袋をがっちりと掴まれていた。元々カイエルはセレスティアより料理の腕前は上ではあったが、今日まで更に精進を重ね、今ではお店で食べるのと謙遜ないほどの腕前になっていた。それ故、セレスティアはカイエルの料理からはすっかり離れられなくなってしまっていた。

　ちなみに今日の朝食はガレットである。クレープ生地から覗かせる、ハムと目玉焼きの半熟の艶が朝から食欲をかき立てていた。あとは色とりどりのサラダにフルーツと、栄養バランスもキチンと考えられているメニューとなっていた。

　「あ～今日の朝食も美味しそう！カイエルまたレパートリー増えたんじゃない？」

　「まーな。それに、まぁ今日は特別だから、ちょっと俺も張り切ったんだけどな。」

　カイエルは朝食の新しい献立に気付いてもらってご満悦であった。

　「うん、そうね。今日は特別な日・・・」

　そう今日は、セレスティアが竜騎士になって5年経った日、つまり

　「やっと・・・やっとお前に触れられる・・・」

　そう言うとカイエルは、座っている対面の席からそっとセレスティアの頬に手を伸ばした。

　「か、カイエル・・・」

　セレスティアは戸惑うも全然嫌ではなかった。むしろ待たせてしまっていて申し訳ない気持ちでいっぱいだったから。

　「あ、あの、カイエルい、今から仕事だから、ね？今はその・・・」

　「！！そ、そうだった。ごめん気が急いちまって・・・」

　カイエルも慌てて手を引っ込めた。

　セレスティアは竜騎士になって5年が経ったことで、恋愛禁止（男女関係のこと）の規則の拘束から解放される日が来たのだ。