102:やっぱりうさ耳は可愛かった。

 「こ、これです!!ホントに、本当にありがとうございましたーー!!」


 ユージィン一行が帰宅後、エメリーネが宿泊している宿に、セレスティアが訪問した。取り返した『炎舞の腕輪』をエメリーネに確認をしてもらうためだ。思った通り、エメリーネが探し求めていた腕輪だったのだ。


 「良かったですね。」


 セレスティアは心の底から嬉しそうにしているエメリーネを見て微笑ましい気持ちになっていた。


 「はい、はい、はい!本当に、なんてお礼を言ったらいいか・・・う~~やっと見つかったぁ。」


 何度も頷き感動のあまりエメリーネは泣き出してしまった。


 「ズミマゼン、嬉じぐって、涙が止まらない~~~」

 

 エメリーネは号泣していた。  


 「だ、大丈夫?」


 セレスティアは慌ててハンカチを差し出した。


 「あ、ありがどうございまず。で、でも、どうじよう、お礼はどうじだら?」


 泣き声で、ものすごい鼻声になっていた。

 

 「いえ、そんな気を使わなくても大丈夫ですよ?」


 「ぞ、ぞういうわげには・・・あっ!」


 「?」


 「よ、よがっだら、わだじの舞いを見まぜんが?」


 「舞い?」


 「はい、わたじ、今期の舞姫なので、旅には出たものの、練習は欠かさずやっていたので、仮衣装もあるんです!良かったら、っていうかこれぐらいしかできなくて、ご迷惑でなければ・・・」


 エメリーネは思い付きでお礼に舞いを見せると言ったものの、よく考えたら独り善がりかもと思ってきたので、最後の方は声が小さくなってしまった。


 「確か、豊穣を祈願する舞いでしたよね。そんな大事な舞いをこの国でしてもらってもいいんですか?」


 個人的には見てみたいと思ったセレスティアであったが、村の重要な踊りらしいので、大丈夫かと心配になった。

 

 「も、勿論です!じ、自慢じゃないけど、村では舞いはいい線いってたんです!あ、でもここでは、狭いかな・・・いつもはひっそりと宿の裏庭とかで練習をさせてもらってたんですけど・・・」


 エメリーネは鼻声はマシになってきた。踊るには、それなりの広さが必要らしいとのことだった。それならばと、


 「良かったらこの間来ていただいた竜騎士支部で、踊っていただけませんか?なんか私だけ見せてもらうのは勿体ないので。あ、大勢の前で踊るのは恥ずかしいですかね?」


 言ったものの、人前で踊るにも単体と大人数の前では、プレッシャーが全然違うことに気が付いた。


 「いえ、是非、やらせてください!村のお祭りでは、村人全員の前で踊りますから、ある意味練習になるし、有り難いです!って、あ、練習って言っちゃってごめんなさい!」


 思ってた以上にエメリーネが前向きだったので、セレスティアはホッとした。


 「いえいえそんなことないですよ。では、私は帰って場所とか段取りしますので、明日か明後日にでも日時を指定させていただきますね。」


 エメリーネが腕輪が見つかったことで、早々に村に帰らねばならないだろうと思い、早急に手配しようとセレスティアは決めていた。舞いを楽しみにしているといい、席を立ったセレスティアに何度も何度も頭を下げて見送っているエメリーネを見て秘かに悶えてるセレスティアだった。(モフモフの耳が可愛いすぎるー!!)





 セレスティアは帰ってから、早速ユージィンに話をしてみた。


 「へぇ、いんじゃない?僕も豊穣を祈願する舞とやらには興味あるよ。」


 するとユージィンは考え込んだ。


 「うーんそうだね。どうせなら、イシュタルにも見せたいし・・・どうするかな?」


 「・・・叔父様、ずっと一人だと思ってたから、気が付かなかったけど、ほんっとうにイシュタルさん、大好きなのね。」


 イシュタルとユージィンの仲睦まじさは、見てるこちらの方が恥ずかしくなるくらいであった。思い返せば、イシュタルがイールの飛竜の時でも、妙にベタベタしていたが、あの時はたんに飛竜好きなのだと思っていたが、今なら納得できる。

 

 「セレス何をいってるんだい?当たり前だよ。彼女は僕のかけがえのない存在だからね。」


 何を当たり前の事をいってるんだ、という眼差しを向けられて


 「うっ、わかったわよ。叔父様に聞いた私が馬鹿だったわ。」


 「ふふ、セレスも近いうちにわかるよ。」


 「うぅ~」


 カイエルの事を言っているのは、嫌でもわかった。とんだ藪蛇だったと、セレスティアはちょっと後悔した。

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